「世界の王室と比較すると、日本の皇室の閉鎖性は際立っています。歴史や伝統を重んじることの大切さも理解できますが、もっと一般国民との触れ合いの機会を持っていただきたいと願っています」
と皇室の時代遅れぶりを嘆くのは、長年、英国を中心に欧州の王室を取材してきたジャーナリストの多賀幹子さん。
「これからの皇室は世界のグローバル化に対応して情報発信をしていく必要があります。伝統と慣習でがんじがらめの英国王室でさえ、ジョージ王子やシャーロット王女が生まれたとき、ウィリアム王子のツイッターアカウントから誕生の第一声を発信しています」
だが、皇室の伝統からすると、"ツイッターで情報発信なんて不謹慎"といった批判の声も上がりそうだ。
「いまは若い人たちが当たり前のようにツイッターを利用する時代。英国王室は時代遅れだと言われないよう努力しています」
例えば、日本でも宮内庁のホームページで皇族の方たちの日常の声を発信するなどして、親しみやすい皇室へ向けた取り組みを検討してもいいのかもしれない。
「89歳のエリザベス女王でさえも"伝統を守りながら時代についていく"と発言されているわけですから。ロイヤルベビー誕生時は、先のツイートに加えて、病院からバッキンガム宮殿まで護衛つきで出生証明書を運び、それを金縁のイーゼル(画架)に載せて前庭に掲示するという伝統も怠ることなく行っています」
伝統を守りながらも、時代に応じて新しいことに取り組む英国王室のしたたかさを感じるエピソードだ。
「王室は国民との付き合い方も上手です。シャーロット王女誕生のとき、病院前で熱烈な英国王室ファンたちが寝泊まりしていましたが、ロンドンの4月の朝晩はまだ冷え込みます。そんななか、ウィリアム王子とキャサリン妃から、朝ご飯としてコーヒーとデニッシュ、クロワッサンの差し入れがあったのです」
王室から差し入れがあるなんて、ますますファンになってしまいそうだ。こうした努力のかいもあって、英国王室は世界じゅうの人たちに愛される存在となっているという。王室を守るための体制づくりもぬかりなく行っている。
エリザベス女王が長子優先を決断
キャサリン妃が第1子を身ごもった当時、エリザベス女王は約300年ぶりに法律を改正し、王位継承を男子優先から長子優先に変えるよう指示した。
「エリザベス女王は男のきょうだいがいなかったため女王に即位しましたが、キャサリン妃が男の子を産むことができず、ストレスを抱えるリスクを懸念したのでしょう。そんな状況になると、王室にお世継ぎ問題が浮上しかねません。女王は絶対に口にはしませんが、日本の現状を目にして"キャサリン妃を雅子さまのようにしてはいけない"という思いがあったはず」
その際の情報発信のやり方も非常に巧みなものだった。女王自身が周囲の人たちに意向を漏らし、それがリーク報道されることで国民の"長子優先"についての反応を確認してから、実行に移したのである。世論の動向をうかがいながら、適切な判断を下そうとする英王室の戦略には舌を巻くばかりだ。
もちろん英王室には男女平等である現代の英国社会を象徴的に体現しようとする意図もあったのだろう。現在、欧州の王室では、ほとんどが長子優先。なぜか長子が女の子の王室が多く今後、代替わりが起きると欧州の王室は、女王が一気に増える可能性が高い。
「先日、英国で雑誌『People』を購入してきましたが、各国の王女を紹介する記事で、愛子さまには"PRINCESS FOREVER"と書かれていました。つまり、愛子さまは"永遠にプリンセスのままでクイーンにはなれない"というわけです」
女性天皇を誕生させるのか否か─。答えを先送りにしてしまった日本の皇室も、いよいよ結論を出さなければならないだろう。ほかにも英国の開放ぶりを実感するのが、当たり前のように王室の人気ランキングや公務数ランキングなどが公表されているところ。
「公務数ではエリザベス女王は年間400回超、つまり1日1回以上、公務を行っています。それもあって1番人気は女王。ウィリアム王子、キャサリン妃、アン王女の人気も常に高いですが、チャールズ皇太子とカミラ夫人は相変わらずの不人気。仮にいま、皇室で人気投票をやったら佳子さまが1番人気でしょうね」
英国王室は離婚や不倫、トップレス写真流出など、スキャンダルが多いのも事実。よいところをバランスよく取り入れて未来の開かれた皇室を築いてほしい。
多賀幹子さん ●フリージャーナリスト。著書『うまくいく婚活、いかない婚活』(朝日新書)など。