そうした悪口もあってか、3月6日、A子さんは自分のタイムラインでこう書いている。
《ぁー学校めんど。笑/あいつらとおんなし空間におるだけで吐き気がするゎ…》
悪口や仲間はずれなどのストレスがピークに達していたのかもしれない。ただ、母親は閲覧できない設定だったため、気がつかなかった。
母親はA子さんの日記を提出した。’12年10月6日に始まり、延べで10日も書いてないが、12月12日の日記にはこう書いてあった。
《(いじめ加害者を名指しして)いらない子なのかな? 死ねるものなら死にたい》
ただ、日記の最後には、
《話を聞いてもらってよかった。人に優しく》
ともあった。
「日記には母親への悪口も書いている。でも、思春期だから誰でも不満はあるはず。真相究明してほしいとの思いで、日記はすべて提出した」
しかし、その思いは十分報われたとはいいがたい。母親は、報告書のバランスの悪さを感じている。
「虐待は認定されなかったが、その検証は十分にしている。クラスのいじめも検証され、認定されている。一方で、部活動での出来事(テニスコートでお墓をつくったことや先輩からの暴力など)は、ほとんど検証されていない」
母親は、元気がなかったA子さんを思い浮かべる。1月の授業参観でのことだ。
「授業参観は欠かさなかった。教室に入るとき、いつもはお互いを確認すると、合図をしていた。しかし、そのときはそっけなかった。"大人になったのかな?"と思っていたが、気づいてあげられていたら……」
報告書は、いじめについての共通理解の重要性、いじめ早期発見のアンケート、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用など、いくつかの提言をしている。
そして、提言を実行するための監督機関の設置を検討対象にあげた。
しかし、5月27日、森下豊市長は市議会の文教常任委員会で、「特別な監督機関は断固として反対。偏った物の見方の提言がされたことに不満を持っている」と答弁した。
新調査委が、市や市教委を「公正中立ではない」と指摘したことに不満があるようだ。
母親は「調査に協力してくれた同級生や保護者には感謝したい」と述べる一方で、「報告書がおかしいと言う時期ではない。なぜ、そんなことを言うのか」と怒りをあらわにする。
A子さんの遺影は、いつまでも静かに微笑んでいる。
〈取材・文/ジャーナリスト渋井哲也〉