「監禁されています! 助けてください!」
都心の池袋駅からほど近い東京都豊島区長崎の単身者向けのワンルームマンションで6月8日、事件は発覚した。朝8時ごろ、路地に面した3階建てマンション1階のベランダの奥から、若い女性の甲高い叫び声が響きわたった。
路地は通勤・通学で人通りが多い時間帯だった。たまたま通りかかった通行人が、ただならぬ声に驚き、携帯電話で110番通報したのだ。
すぐさま、警視庁目白署の捜査員が駆けつけたが、玄関のドアは施錠されていた。やむなくベランダから強引に入ると、若い女性がいた。
しかし、ただそこにたたずんでいたわけではない。全裸姿だったのだ。しかも、
「自転車のワイヤーなどを束ねる拘束バンドで両手両足を縛られ、バンドは長いひもでクローゼットのポールに結ばれていた」(捜査関係者)
女性は急きょ、病院に搬送された。ケガはなく、埼玉県川口市在住のAさん(22)と判明した。一方、この部屋の住人は男性だった。警察は男性に事情を聞くため行方を捜した。
110番通報からおよそ7時間後の午後3時ごろ、目白駅前交番にひとりの男性が出頭してきて、こう言った。
「私がAさんを部屋に閉じ込めてしまいました」
男性は即刻、監禁容疑で逮捕された。その部屋の住人で職業不詳の渡邉淳一容疑者(43)だった。
そもそもの発端は、今年1月のこと。「出会い系アプリ」で2人は知り合い、数回会った。ところが、Aさんは、
「怖い人だと思い、それからは会うことを避けるようになって……」
と、5月以降は連絡をとることもなくなっていた。
すると容疑者は偽名を使ってAさんと接触。6月1日、自宅から約17キロ離れた埼玉・JR東川口駅までレンタカーを走らせ、Aさんを呼び出すことに成功したのだった。その車中で2人は2時間ほど会話。だが、Aさんが、
「もう帰りたい」
とこぼすと、用意してきた粘着テープでAさんの手足を縛り、全身を布のようなもので覆って、自宅まで連れ帰った。夜の9時半ごろだった。以降、1週間の長きにわたって監禁は続いた。
手口は汚い。留守中、部屋をのぞかれないようにするためか、ベランダはベニヤ板と布で目張りしていた。裸にして助けを呼びにくくし、さらに、雑な日曜大工で監禁部屋を急ごしらえしたとみられる。近隣住人は、
「あれっ、なんで、こんなふうにしたのかな」
と思う程度で、女性監禁用の工作とは気づかなかった。渡邉容疑者は、
「ホントは付き合いたかった。いなくなったら困るから、監禁してしまった」
と供述しているという。
〈取材・文/フリーライター山嵜信明〉