「身体は小柄だけど、性格は堂々としていて、子どもたちもちゃんと育てている。しっかり者の優しい母ちゃんですね」(高崎山自然動物園・江川順子さん)
サルの世界で母子の奇跡!? 大分県・高崎山自然動物園に、5月に産んだわが子と育児放棄された赤ちゃんザルを一緒に育てる珍しいサルがいる。名前はカラオケ。9歳の母ザルだ。
「育児放棄も、2匹同時に育てるのも過去にほとんどありませんね」
ニホンザルは双子を産むことがあまりなく、通常は1匹ずつ育てる。しかし、カラオケは1匹を遊び場で遊ばせながら、もう1匹に母乳を与える。普通のサルではありえないような、優しく頭のいい肝っ玉母ちゃんだ。
赤ちゃんザルを2匹同時に育てるのは、母乳が足りなくなり難しいという。それを可能にしているのは、カラオケが所属する群れのナンバー2で22歳のオスザルのマクレーンの存在。2匹は愛人同士なのか、それとも……。
「昔から仲よしで、カラオケを彼がいつも守ってくれるんです。強いオスと仲がいいので、食事のときもエサを中心部でたくさん確保できる。十分栄養をとり母乳の量が確保できているようです」
気になるカラオケという名前の由来は、母ザルが“ボックス”だからだそう。ちなみに、この動物園には英国王室にちなんだ名前が物議をかもしたあの“話題のサル”もいる。
「サルの名前は親の名前の頭文字を取ったり、ボックス→カラオケみたいにイメージしやすいものを選んだり。シャーロットみたいに毎年、いちばん最初に生まれた子には公募で名前をつけますが、ある程度の年齢になるまで、普通は名前をつけない。なので、2匹の子ザルにも名前はないんですよ」
間もなく紅葉シーズン。秋の高崎山へ、この奇跡のサル母子を見に足を運んでみるのはいかが?
撮影/淡居誠