その色気で女性ファンを骨抜きにしている斎藤工。実は、映画館のない地域に赴き、子どもたちに劇場体験ができる場所を提供する、移動式映画館『シネマバード』プロジェクトを立ち上げている。5月14日、15日に大分県豊後大野市で行われた『シネマバード大分』について取材した。
「こんなところから関わるの? というくらい、最初から最後まで細かくチェックされていましたね。音響やスクリーンも持ってきてもらったものを使ったんですが、とても音がよくて映像もキレイで、異空間のようでした」
語ってくれたのは、大分県豊後大野市にある明尊寺の住職・藤村暢さん。5月14日と15日に、このお寺の本堂で開催された『シネマバードプロジェクト大分』についての感想だ。
この“移動映画館プロジェクト”は今回で3回目。'14年は宮城県、'15年は福島県で行われた。発足にあたり、斎藤はこう発言している。
「映画館で育った私としては、劇場体験をしないまま大人になっていく子どもたちに、ぜひ映画体験をしてほしい」
そこには、映画を取り巻くこんな現状がある。
「最近はシネコンが増えたため、街の小さな劇場など、スクリーンがひとつしかない“通常型映画館”の閉館が相次いでいます。映画館の総来場者数も激減。ピークの'58年には11億2700万人でしたが、昨年は1億6700万人まで落ち込みました」(映画ライター)
そこで立ち上がったのが、映画専門誌で連載を持つほど、映画好きな斎藤。映画館のない土地を訪れ、子どもたちをはじめとした地域の人に映画を“出前”する活動を始めた。
「何せ、高校卒業後は映画学校に通いたいと願書を提出したほどの人。今もいつでも映画が見られるようにと、映画のDVDソフトを持ち歩いているそうですよ」(映画ライター)
今回の豊後大野市も映画館がなく、映画を見るには車で1時間かかる大分市まで行かなければならない。2月には先遣隊が寺を訪れ、開催可能かどうかをチェック。
藤村さんによれば、「背が高くて、ロングコートと個性的な帽子をかぶった」斎藤本人の姿もあったそう。
「オーラがあるのに、すごく腰が低いんです。坊主がお茶を1杯、お出ししたのですが、スタッフさんたちが“いただきます”と立ったままお飲みになるなかで、斎藤さんだけが“わざわざすみません。せっかくなので、座っていただきます”と、ゆっくりお茶を味わってくださいました」(藤村さん)
25分ほどしかなかった滞在時間のなかで、彼が見せた心の余裕に感心したという住職。さらには、こんなエピソードも。
「坊主とも世間話をしてくれていました。“時代劇に出ると、畳のへりを踏まないようにとか、いろいろ勉強になるんですよ”と。偉ぶらない人なんだなぁ、と驚きましたね」(藤村さん)
そして、迎えた本番。3本の作品が2日にわたって上映され、毎回100人前後の人が寺の本堂で映画を楽しんだ。
「1部は子ども向けの作品で、斎藤さんがナレーションを務めたネイチャードキュメンタリー『小さな世界はワンダーランド』、2部は新垣結衣さん主演の『くちびるに歌を』、3部はフランスで750万人の動員を記録した『エール!』でした。すべて彼のオススメ作品です」(ボランティアスタッフ)
そのうえ、意外な助っ人も登場。
「斎藤さんの親友で、お笑い芸人の永野さんやシンガー・ソングライターのMOGMOSさんも来てくださいました。子どもたちはもう、永野さんの登場に大喜びで(笑)。ただ、それでは斎藤さんが目立たないんじゃないかと思ったんですけど“それでいいんです、この会の黒子としていられれば”と話していたそうですよ」(藤村さん)
その言葉どおり、斎藤はボランティアスタッフたちに交じって、観客へのサービスに専念。出迎えや見送りはもとより、写真や握手に応じたり、お菓子を配ったりもした。しかも、こんな一面も。
「1日目はかなり暑かったので、外でお客さんの応対をする私たちに“大丈夫ですか?”と熱中症の心配をしてくださっていました」(スタッフ)
そんなご一行のために寺では郷土料理の『団子汁』など、2日間で6食を用意したそう。食べ終わると、「本当に美味しかったです。僕たちのためにこんなに働いていただきすみません」と、笑顔を見せ、「すごく美味しいから食べなよ!」とスタッフにもすすめていたそう。会場の反応も上々だったようだ。
「女の人の黄色い歓声はもちろん、私の後輩である50代男性も“男前なだけじゃないな~”と、ウットリとため息をついていました(笑)」(藤村さん)