■逆にリアルな感じでいいのかな
作品を見ていて羨ましいと思うのが、樹がさやかのために作る、四季を感じる愛情あふれるお弁当。これまで、誰かにお弁当を作ったことは、ある?
「ないかもしれない。自分のためにもないです。この作品で作ったものが、初めて。学生のころは、母親が作ってくれたお弁当をよく食べていました。料理上手な母のきんぴらが定番で入っていた。今回、改めてお弁当っていいなと思いました」
今作の樹のように、料理のできる女性に惹かれると言う。
「一見、できなさそうなのに、筑前煮とか作れちゃうギャップのある人には、特に」
初主演映画で、初のお弁当作り。そして、さやかの誕生日には、初生歌の披露となるバースデーソングでお祝いするシーンが。
「確かに、僕の歌声が聴けます(笑)。なかなかないことなので、恥ずかしいです。あのシーンは、いま見ても緊張しているのが伝わってくる。それが、逆にリアルな感じでいいのかなと思って(笑)」
半年という期間限定の同居人であるふたりの距離は、時間を重ねるごとに近づいていく。それでも、樹はさやかに野草の話はしても、名前以外のことは秘密にしている。
「樹のバックボーンに共感できる部分はありました。1度きりの人生だから、自分の道を歩みたいっていう気持ちは、ひとりの男として純粋に理解できる。それに、自分自身をレベルアップさせるために時間を使うことは、まったく悪いことだとは思わない。でも、やり方次第ですよね。僕は、樹みたいな行動はとれないです」
お互い心にブレーキをかけながらも、あふれ出てしまう思い。そして……。この場面で見た、今作の中で特に印象に残るシーンのひとつが、三代目JSBの『C.O.S.M.O.S.~秋桜~』のミュージックビデオの場面と重なったことを伝えると、こんな返事が。
「あぁ、懐かしい。カメラ目線のところに、布がふわっとかかっていて。確かに、そうですね。監督から、こういうシーンをやるのが初めてでしょって言われて“2度目です”って言った記憶があります(笑)。
あの場面、セリフがほとんどなくて、ほぼアドリブだったんです。だから、現場の空気感がもろに出ている。ちょっと恥ずかしいシーンでもあるんですが、試写で初めて見たとき、芝居に見えない感じがして、すごく自然だなと思いながら見ていました。台本を読んだときは、こんなに印象的なシーンになるとは思わなかった」