千葉市稲毛区稲毛東の2階建てアパートで4日午後9時55分ごろ、住人で事務職の契約社員・茅野利奈さん(41)が死亡しているのを父親が発見し、110番通報した。
「ホントに怖いですよ。ほら埼玉の女子中学生誘拐事件で逮捕劇があったばかりでしょう。容疑者が千葉大在学中に監禁していた部屋が隣の駅の近くなんです。立て続けにこの事件ですから……」
現場近くの40代女性は不安げな表情を浮かべた。
首や腹部など数か所を刃物のようなもので切りつけられたり、突き刺されていた。部屋に凶器は見当たらず、千葉県警は翌5日に千葉西署に殺人事件の捜査本部を設置。100人態勢で捜査を進めている。
「ひとり暮らしする茅野さんの無断欠勤を不審に思った都内の勤務先企業が、実家の父親に連絡を入れた。駆けつけると玄関のドアは施錠されておらず、部屋には明かりがついていなかった。茅野さんは普段着のままあお向けに布団に横たわり、血まみれだった。遺体には掛け布団がかけられていた」(全国紙記者)
司法解剖の結果、失血死と判明。死亡推定時刻は3日夜から4日朝にかけて。
部屋は1Kの洋間で、近隣相場では家賃4万円前後。最寄りのJR稲毛駅まで徒歩約5分とアクセスがいい。遺体には抵抗するときにできる防御創がなく、現金や貴金属など部屋を物色したような形跡もなかった。
茅野さんが週1回の割合で利用していたクリーニング店関係者は次のように話す。
「身長160センチぐらいで少しポッチャリされていましたけど、実年齢より10歳は若く見えましたね。地味な服装を好み、休みの日はスッピンで出歩いていました。ニコニコしていて普通にしゃべる。結構な美人さんなのに、男性と一緒のところは見たことがありませんでした」
犯人を追い詰めるためには、3つのナゾを解かなければならない。まず、なぜ茅野さんは抵抗しなかったのか。新潟青陵大学の碓井真史教授(犯罪心理学)が指摘する。
「友達や恋人など親しい人物が、死角からいきなり切りつけたケースなどが考えられる。状況から見て、被害者が普段着のまま加害者を部屋に招き入れたと考えるのが自然。犯行後、遺体に布団をかけているから、顔見知りの人物かもしれない」
室内を荒らした痕跡がないのも引っかかる。例えば恋愛・人間関係や金銭トラブルなどに起因する怨恨目的の犯行だった場合、捜査を攪乱するためにわざと現金などを盗んでいくことがある。そうした工作がみられない反面、凶器だけは持ち去っている。これは何を意味するのか。
「凶器は持ち込んだのか、部屋にあったのかわからない。いまだに発見されていないのは指紋などの物証を隠すためでしょう。心臓ではなく腹部などを刺したのは、素直に受け止めれば、動揺の表れといえます。
刺し傷が多いと女性の犯行ではないかとよく言われますが、男性でもそうなるし、たいていは怖くて心臓や顔にはなかなかいかないものです」(碓井教授)
県警は、近隣の防犯カメラを分析するなど犯人の手がかりを追っている。一刻も早い逮捕が待たれる。
取材・文/フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班