山梨県韮崎市の静かな住宅地で4日夕方、母親の池田千夏容疑者(39)が、息子・雄生くん(11)の首をロープで絞め殺害するという事件が起こった。雄生くんは障がいを持っており、そのためか育児で悩んでいたという池田容疑者。精神科に通っていたという情報もある。
東京学芸大学の菅野敦教授(知的発達障害心理学)は、広汎性発達障害の情緒不安定性について、こう語る。
「見通しの立たない物事や、意図しない出来事が起こると、非常にストレスを感じ、暴力や暴言などの行動をコントロールできなくなります。ストレスを感じたときの行動に対する発達の遅れがあるんです」
私たちも突然、大量の仕事が与えられたら混乱する。それと同じだ、と菅野教授は話す。発達障害を持ちつつも社会で活躍する人材は多数いることも話してくれた。
「基本的に障がい者が困っていることを明確にすれば社会的に適応していけます」
そう説明したうえで、“息子の将来に不安を感じていた”という千夏容疑者が雄生くんを受容できていなかったのではないか、と指摘する。
「広汎性発達障害の児童は一見すると障がいのない子と違いがわかりません。明確な差が見受けられないことで、保護者は一部しか違わないのにと障がいを受容することが難しくなる傾向があります。今回も児童に対する受容が遅れていたのかもしれませんね」
学校は市などと連携しこまやかな対応をしていたというが、悲劇は起きてしまった。
「行政、医師、学校が十分に連携していたにもかかわらず起こってしまったようですが、保護者にまで障がいに対する取り組みが伝わっていなかったのかもしれません。サポートする側は保護者と障がい者両方に向き合っていく必要があるんです。保護者にも障がいを受容するよう働きかけることが大切です」(菅野教授)
近隣住民は、千夏容疑者の置かれた状況に同情する。
「不憫でしょうがない。社会的な制裁を受けるのはしょうがないにしても、せめて執行猶予がついてくれれば……。長女もおばあちゃんもいるわけだから、みんながつらい思いをする事件だよ」
そう唇をかみしめる。雄生くんが通っていた小学校の校長は7日、全校集会で、こう呼びかけて黙禱したという。
「雄生くんの分も勉強し、友達と仲よくし、安全に気をつけて一生懸命生きましょう」