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 夫から妻へのDVや親による子どもの虐待は以前から問題視されていたが、最近は娘からの家庭内暴力に苦しむ母親が増えているという。

 警察庁の最新データによれば、2014年の未成年による家庭内暴力事案は約2000件で、10年前のほぼ倍。中でも、母親を暴力の対象にしているケースが60%以上を占める。

 夫婦・家庭問題評論家の池内ひろ美さんと、母娘関係改善カウンセラーでメンタルケア心理士の横山真香さんに話を聞いた。

■母を監視、支配したがる

 母親の気を引くため、娘はあの手この手を使う。確認したいのは“私が何をしても本当に守ってくれるのか”という本気度。

「子どもはやはり母親から愛されたいので、悪いことをして気を引こうとします。父親の子育てへの協力が希薄であるという点も、娘の暴走を生み出す土壌になります。日々叱ってくる母親だけがうっとうしくなり、女性は力も弱いので娘はなめてかかる」(池内さん)

 なかにはマインドコントロールが上手な子も多い。

「20代の娘さんのお母さんで、ひどい仕打ちを受けていながら、“娘の言うことを聞いていると、自分が悪いような気がしてしまうんです”とおっしゃっていた方がいました。理不尽に責められたときに謝ってしまうと、娘の暴君ぶりを助長します」(横山さん)

 娘の中で目覚めてしまったモンスターは、こうなるともう手に負えなくなる。

「私がこんなに苦しんでいるんだから、あんたも一緒に苦しめ!」「お前は1日中、出かけるな」などと言葉責め。肩をつかんだり髪を引っ張ったり、やりたい放題。暴君と化す。

 横山さんがさらに続ける。

「母を監視、支配したがるというのも、“モンスター娘”の共通点のひとつです。数か月前に母親が相談にやって来た大学生の場合は、“抱っこして”とせがんだり、“父と弟とは別居して私だけと住んで”と言ったり、飼い犬が母とじゃれていると、犬ごと母を突き飛ばしたりするそうです。

 勝手に母のスマホをいじり連絡先をすべて消去したことも。独占欲が強いんですね。家庭環境に夫のDV、物にあたるきょうだいがいたりすると、娘も暴力的になりやすいという共通項もあります」

 池内さんも、お手上げの実例を明かす。

「思春期の心身のしんどさを友人とのケンカや外での活動で発散できない子は家で物や妹、弟、ペットなど弱いものにあたるか、母にぶつけてしまう。暴力を1度ふるうと興奮してしまい、中学生の娘が、母を骨折などに追い込んだ例もあります」

■ときには警察に通報する覚悟も

 モンスターの芽をうまく摘み取る方法はあるのだろうか? 横山さんはこう断言する。

「母ひとりで我慢しても、モンスターをさらに育ててしまうだけです。“母親はどんなときも自分に服従する”というイメージを払拭し、ときには警察に通報してもいいくらいの覚悟を持ちましょう。

 それから味方を増やし情報収集をすること。10代のうちの主な相談窓口は、スクールカウンセラーや児童相談所など。“大きくなったら落ち着くだろう”とは思わず、すぐ対処するべきです。小さなころから暴言、暴力が激しい場合は、ADHD(多動性障害)などの発達障害を抱えている可能性も考えられますから」

 池内さんは、具体的な対策を打ち出す。

「暴走したらまず、その場から逃げてください。“暴力がなくなったら戻る”と意思を強く持ち、距離を置きましょう。娘の関心をほかにそらすことも重要です。暴力がいちばんおさまるのは、恋人ができたときなんです。もしくは娘が打ち込めるものを積極的に見つけることが効果的です」

 そのうえで親として冷静に、“夫婦仲”を見直すこと。

「家庭内暴力が行われている家庭の夫は娘に無関心か母親を悪者にし“おまえが悪い”と責任をなすりつける。子どもが暴力をふるう家庭は、ほぼ夫婦仲が悪いんです」(池内さん)

イラスト/スヤマミヅホ