'13年に厚生労働省の研究班が発表した調査によると、日本全国のアルコール依存症患者は109万人。パチンコなどのギャンブル依存症の疑いがある人は536万人、スマホやSNSなどインターネット依存症の疑いのある人は421万人にのぼるという。
そこで知っているようで知らない「依存症」のリアルについて、榎本クリニック理事長で医学博士の榎本稔医師に教えてもらった。
【Q1】『大酒飲み』と『アルコール依存症』の違いは?
ほとんど毎晩のようにお酒を飲むし、飲み始めたら酔っぱらうまで……。お酒は大好きだし、誘われたらつい飲んでしまう。これはアルコール依存症なのだろうか?
「実は、アルコール依存症であるかどうかの診断基準は、明確にはありません」
さまざまな依存症に関する著書が多数ある榎本稔医師はそう話す。
「お酒が好きで毎晩飲んでも、翌日ちゃんと仕事に行くなら問題ないでしょう。ただし、飲みすぎて仕事に行けなかったり、酔っぱらって暴行や痴漢などの問題を起こしたり、身体を壊して入院したり、家族に迷惑をかけるようになったらアルコール依存症と言えます」(榎本医師)
お酒をいっぱい飲んで「酒豪ですね」と言われているうちはいいが、勝手に仕事を休んだり、周りから「ちょっと、おかしい」と思われ始めたら危険信号。
「ほどほどの量であれば、昔から言われるように“酒は百薬の長”。ほんの憂さ晴らしのつもりで飲み始めたのが、いつしかハマり、習慣になって、飲む量が増える。やがて“今日はこれくらいでやめておこう”と思っても、歯止めがきかなくなる。つまり、自分で自分の行動を抑えることができなくなる。これが依存症の典型的なプロセスです」(榎本医師)
わかっちゃいるけどやめられない、という状態がつまり、依存症なのである。
【Q2】依存症になっているかどうかを見分ける境界線は?
ここまでやると、もはや依存症かも……なんて、自分で依存症に気づくことはできないものか。
「そもそも依存症の人は自覚がまったくありません。依存症とは現代社会が作り出した病気ですが、本人は病気だなんて思っていない。悪いのはお酒を売っている店だし、パチンコを営業している社会だし、自分をこうしたのは教育のせいだと思っています。
ただ、何か問題を起こす前に、その人が依存症であると見分けるのは難しいし、区切り方もわかりません。ケガや病気で苦しくなれば病院へ行きますが、依存症の人は自ら病院やクリニックに来ることはありませんから」(榎本医師)