今回の参院選で注目を集めているのが、全国に32ある改選議席が1人の一人区。ここでの勝敗が参院選全体の行方を左右すると言われるからだ。
野党はすべての一人区で候補者一本化を実現。与党への批判票が野党各党に分散して「死に票」となるのを避けるためだ。唯一共産党が野党統一候補となった香川で16日、民進、共産、社民、生活の野党4党幹部がそろって街頭演説に立つなど、選挙戦を通して野党共闘の姿勢を強く打ち出している。
激戦が予想される1人区の注目候補者を直撃した。
匿名ブログに綴った悲痛な叫びがママたちの共感を集め、参院選の争点にまで発展した『保育園落ちた日本死ね!!!』。切実な思いを抱えて国会に集結した女性たち。一方、実在するのか? 乱暴な言葉づかい……などと的はずれな批判を繰り返した男性たち。
このギャップを埋めようと国政に挑むのが山梨選挙区の宮沢由佳候補だ。
「多くの女性が妊娠出産で離職したり、離職しなくても子育てと仕事との両立が大変難しかったりする。
少子化対策や子育て支援という言葉を耳にするようになって長くたつけれど、結局、ちっとも有効な手立てがない。負担はすべて女性に降りかかっているのが現状です。なぜなら、そういう状況になるような制度を作っているのが政治で、国会にいるのも男性ばかりだから」
宮沢候補も、子育てに悩むひとりの母だった。
「名古屋から山梨へお嫁に来て、保育士だったので子育てを楽しもうと思っていたのに、孤独でした。都会ではマンションひとつあれば子育てサークルができるんですが、こちらは少子化で、なかなか親子に会えない。とにかく子育ての情報がほしい、仲間がほしい。その思いから子育て支援事業を始めた。24年間、携わってきました」
その間、子育てサークルは子育て支援センターに発展、県内じゅうに配置されるようになった。
「行政にも働きかけて活動を続けるうちに、山梨県は先進的な子育て支援の県になりました。ただ、支援センターに行く暇がなかったり、子育てに疲れ果てひきこもってしまったり、私たちの支援からこぼれ落ちる人たちはいっぱいいます。どうすればいいのか考えたとき、根本的な社会の仕組みを変えていく必要がある。となると、もっと当事者である女性議員を増やさなければいけません」
今季限りで引退する政界の重鎮・輿石東参院副議長の後継者として声がかかったのは、今年1月のことだ。輿石氏に「議員のなかに、子育てや介護を自分の手で実際にやった人はほとんどいない。当事者としてその声を国会にぶつけてほしい」と言われた宮沢候補は、やるしかない、と決意した。
「介護や子育について、当事者ではない人たちが決めていることが私には納得いかない。“一億総活躍社会”といえば聞こえはいいかもしれないけれど、女性や母親たちを労働力として駆り出したい、活用したいとの思惑が見えてしまう」
選挙活動を支えているのは、かつて子育て支援でかかわった親たちや、ボランティアの市民たちだ。野党統一候補に対し、与党からは「野合」との批判も上がっているが、気にしない。
「本気で子どもの幸せを考える国に変えたい。そのために立候補したのですから」