1年前に起きた「チリ津波」の教訓
また最大の要因は2010年2月27日に起きたチリ津波のときの避難経験だ。チリでマグニチュード8・8の地震が起き津波が発生した。翌28日、津波警報が発令。宮城県は「大津波(3メートル)」という予報で事務長が判断し、午前11時40分ごろ、10キロほど内陸にある、認知症グループホームなど3か所へ避難した。
この「チリ津波」では、岩手県久慈港で1・2メートル、宮城県石巻市鮎川で78センチを観測している。
実はこのときは、施設では素早い避難ができず、組織としてのまとまりを欠き、1時間以上もかかってしまった。そのため、反省会を10日後の3月9日に開催、教訓を共有したのだ。
利用者がパニックになるため職員は冷静な対応をすべき、非常食を持ち出せていなかった、利用者のケース記録を持ち出すべきだった、などの声が出ていた。
「チームワークのよさが思わぬところで出ました。チリ津波のときの反省を生かし、震災では犠牲者を出さずにすんだ」(小助川園長)。
震災から3年後、施設(4階建て)は約2・5キロ内陸側で再建した。それまで利用者は別々の施設で生活していた。現在は津波対策で、利用者は2階以上で生活する。避難所になることも想定している。
“奇跡の脱出”は日ごろの訓練と教訓の共有、そして当日の現場責任者の的確な判断が重なり、生まれた。