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「わさおを飼うまで、秋田犬を育てたことがなかったの。だけど、とにかく(同じ秋田犬の)ハチ公が大好きで、オヤジより好きだったの(笑)。そしたら最後にこういうふうに、秋田犬と巡りあわせてくれた」

 だがそんなわさおとも、いつかは別れの日がやって来る。先日、グレ子が旅立ってしまったように。

菊谷さんに撫でてもらい、気持ちよさそうなグレ子 撮影/竹内摩耶
菊谷さんに撫でてもらい、気持ちよさそうなグレ子 撮影/竹内摩耶
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「わさおとの別れのことはまだ考えてもいないけども、今まで犬を40年近く育ててきて犬にも猫にも、1日1日、自分のできることを精いっぱいやってきたの。犬たちにエサをやらなきゃならないから、店だって365日、休みなんかない。私、温泉旅行にも行ったことないんだよ。

 そんなふうに自分のできることはヒタヒタになるまでやってきたから悔いはない。だからその時が来たとしても、悲しくはないの」

 わさおとかあさん、そして犬猫たちの関係は、人とペットというのとはちょっと異なる。ベタベタしないし、猫かわいがりもしない。そのかわり、朝から晩までいつも一緒。いわば、相棒同士といった存在だ。

 そして、この動物たちの最高の相棒は言う。

「命あるものは最後まで面倒見るのが人間として当たり前でしょ? 私はいいことしているとは思わないよ、当たり前のことをしているだけだ。動物は自分の子どもと同じ。自分の子どもと思って飼わなくちゃ、だめなんだあ」

 ああ、ここで暮らす犬猫は、本当に幸せだ─。

※「人間ドキュメント・菊谷節子さん」は3回に分けて掲載しました。第1~2回は関連記事の中にあります。