ボランティアで運営「川口自主夜間中学校」
手弁当のボランティアで運営してきた夜間中学もある。
埼玉県川口市の『川口自主夜間中学校』は毎週2回、午後6時半から2時間開校する。授業料は無料。公共施設の会議室を教室として借り、元教師や学生らが無償で先生役を務める。創立31年になる。
元小学校教諭で同校代表の金子和夫さん(69)は言う。
「埼玉県には公立の夜間中学がありません。昨年7月から、形式卒業者は夜間中学で学び直せるようになりましたが、学校がないんだから入学しようがない。うちでは4人の形式卒業者が勉強しています」
6人がけのテーブルが8つ。生徒にはほぼマンツーマンで先生がつき、日本人生徒用のテーブルは2つ。ほかは外国人向けの学力別テーブルだ。
アフリカのマリ出身のディアキテ・オッセーさん(35)は画数の多い漢字に頭を抱えていた。水道工事の仕事に就いて1年半、業務範囲を広げるために自動車の運転免許を取りたい。教えるのは元大学教授の大西文行さん(76)だ。
川口市内のタクシー運転手の男性(67)は、台湾から2週間前に呼び寄せた妻の子どもを連れてきた。約1年半前、友人の紹介で16歳下の台湾人女性とお見合い結婚した。妻の祖父母が面倒をみていた小4男児を引き取った。
「2学期から転入する小学校に挨拶に行ったら、中国語がわかる教師はいないと言われた。自力で日本語を習得して学校の勉強についていくしかない。家族の支えだけでは世の中は渡っていけないし、学校でたくさん友達をつくってほしいから」(男性)
約半年前に中国から来日した元会社員・宇敬民さん(42)は、言葉の壁にぶちあたって仕事に就けずにいる。
先生役を務めるのは販売業の権文穎さん(31)。5年前に中国から来日し、1年前まで自主夜間中学の生徒だった。
「故郷を離れて心細い中、先生はみんな親切だった。娘のように心配してくれて、あったかかった。恩返しをしたい」と権さんは言う。
別のテーブルでは日本人女性(22)が分数の計算に取り組んでいた。使っているのは小学生向けのドリル。高校は卒業している。ただ、病気で休みがちだった。
「看護師になりたい。数学ができないと看護学校にも入れないし、免許が取れない。勉強し直したいと思って今年5月から通っています」(女性)
前出の金子さんは「ここに来る子はまじめ。騒ぐような子は少ない」と話す。