あくまで交際については、

「いや、付き合いとかそんなのはしてないけど。いや、まぁ今、俺が狙っている娘だよね」

─お知り合いになられてどれくらいですか? デートは、どのくらいしていますか?

「デートなんて何回もしてるよ」

─では、なぜまだお付き合いされないんでしょうか?

「まぁ、そういう感じになってないから……」

 スピードはスローながら、着々と距離は縮めている感じの口調ではあった。

─今後、お付き合いをしたいと思っていますか?

「まだわかんないけど、そうだねぇ……うん」

 “安達祐実さんも再婚なさったということで、そろそろ井戸田さんも再婚なさったりはしないのでしょうか?”そう問いかけると、先ほどまでとはうって変わって突然浮かない表情になり、

「あー、再婚とかは全然ないけど、安達さんのことはちょっと……。もう向こうは幸せにやっているんで」

 そう言うと、そそくさとエントランスに入っていった。