【大岩山日石寺】(富山県・上市町)
今年7月30日、「大岩不動」として知られる日石寺に“ミニお遍路”が復活! その名も「お砂踏み霊場」。霊場には四国にある88の本尊を模した石仏が並び手前には本家の各寺院から提供された砂が置かれている。それらを踏みながらすべてを参拝すると、お遍路と同じ功徳を積めるという。参道の長さは1kmあまりで本家お遍路の1400分の1ほど。それでいて同じ効果があるというから、驚き!
「お砂踏み」は、江戸時代から続く風習。四国で八十八か所巡りをした商人がお遍路を地元に伝えようと、各寺院の砂を全国に持ち帰ったのが始まり。
日石寺の「砂踏み霊場」もこうして作られたが、1969年に起きた水害で砂がなくなってしまっていたそう。真言密教の聖地である高野山が2015年に開創1200年を迎えるのに合わせ、待望の復活を遂げた。7月末には開眼法要も行われ、今まさにパワーが高まっているスポットといえそう。
ところで、日石寺を訪れたら、門前町の散策もお忘れなく。百段坂沿いのお食事処にはところてんに川魚、山菜……何よりそうめんは「そうめんといえば大岩山で」といわれるほど有名だ。
お遍路で汗を流したあとは、ご褒美の地物料理を堪能、なんていかが?
【矢田寺】(奈良県・大和郡山市)
1925年に開かれた約3・5kmの遍路道。奈良盆地の北に連なる矢田丘陵の中心、矢田山の中腹にあり、本堂に向かって左手から、裏山の山道をぐるっと一周するようなコースだ。
一時期、倒木や雑草などで荒れ果て通りづらくなっていたが「矢田寺へんろみち保存会」らが整備を進め、2006年に修復が完了。往時の姿を取り戻し、県内の人気スポットに躍り出た。
「道中、眼下には奈良盆地ののどかな風景が広がります。東には奈良の若草山や大仏殿の甍(いらか)が、南には飛鳥地方の大和三山も遠望できます。徒歩で約1時間30分程度で巡る、手軽なお遍路ですよ」(住職の前川真澄さん)
矢田寺の別名は「あじさい寺」。初夏には約60種、およそ1万株ものあじさいが咲き乱れ、一帯は鮮やかな水色に染まる。紅葉もきれいで、四季を通して違った景色がコースを賑わす。日本最古のお地蔵さんも安置され、お遍路以外にも見どころが多いのが魅力。
大自然の中でリフレッシュがてら、ご利益にもあやかれちゃう“オイシイ”お遍路を味わってみては?
【篠栗四国八十八ヶ所】(福岡県・篠栗町)
全長約50km、3泊4日ほどで巡る霊場。天保年間、慈忍(じにん)という尼僧が四国八十八ヵ所を巡礼した帰り、フラリと篠栗村へ。不作と疫病に苦しむ村人たちの姿を目にした慈忍は、弘法大師の名において祈願を続け、やがて見事に村人たちを救済。これを弘法大師のご利益として、篠栗に四国を模した88の霊場が作られ始めた。
札所の中には大規模な寺院もあれば、無人の小さなお堂、また住宅地の中心に佇んでいたり、山奥にあったりと、バリエーション豊か。単純にまち散歩としても楽しく巡れるため、ウォーキング好きにも人気大。
コースの中には横41メートル、高さ11メートル、重さ300トン(!)もの涅槃像がある1番札所・南蔵院。大きな「くぐり岩」をくぐって到達する32番札所・高田観音堂。3000体以上の水子地蔵尊が並ぶ呑山(のみやま)観音寺など、さまざまな特徴をもつ札所がそろい、飽きずに巡れそう。
朝のお勤めができる宿坊や、100年以上の歴史がある旅館が10数軒建ち並んでいるため、遠方からの参戦組も安心。篠栗町観光協会による“お遍路ツアー”も年に複数回、開催され町おこしにもひと役買っている。
四国で数十日かけて遍路をするのはさすがに大変、という人も、これならハードルは下がる。とはいえ50kmはあるので巡り終えた達成感はきっとひとしお! 願かけに行ってみるのもアリでは!?