作家の台本をさらに面白くする女優、吉田羊

 秋に自分の小説が映画化される。『ボクの妻と結婚してください。』。この映画で吉田羊織田裕二演じる、余命半年の放送作家・三村修治の妻、三村彩子役。夢のようなキャスティングだ。

 撮影現場に何度か足を運ばせてもらった。お会いしているうちに原作者という立場を利用して女優と打ち解けて、「羊ちゃん!」なんて呼ぶようになっているのかな〜とにんまりしていたが、実際、現場に行くとあまりの集中力に声すらかけられなかった。柱の陰から見守っているのが精一杯。

 そして完成した映画を観て、吉田羊の演技に感涙。普通の観客になってしまう。

 放送作家は青島刑事と違って「事件は会議室で起きているじゃない、現場で起きているんだ」ではなく、ほとんどが会議室で行われる。タレントましてや女優と接することは滅多にない。しかし、出演者の一挙手一投足をイメージして企画を練る。それを本番でいとも簡単に超えていく出演者は、番組を面白くする。それが吉田羊だ。

 役者のみならずコメディエンヌを一生懸命演じる人がいると、裏方の放送作家も負けられないと奮起し、それに恥じない番組を考える。そんな演者とスタッフの共犯関係が今、とても楽しい。

<プロフィール>
◎樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また『ボクの妻と結婚してください。』など小説も上梓。9月15日に4作目『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)が発売。映画『ボクの妻と結婚してください。』が11月5日全国東宝系で公開。