30年以内には、きょうも明日も含まれます

 高橋教授は「現時点では阿蘇山は巨大噴火につながらない可能性のほうが高いとみています」と話す。

「ただし、今回の阿蘇山噴火によって、南海トラフ地震がまた1歩近づいたということは言えるでしょう。30年以内に70%の確率で起こると予測されながら、なぜか“30年後は危ないかも”程度にしかとらえていない人が多い。30年以内には、きょうも明日も含まれます。被害を最小限に抑えるため、防災対策を怠らないでください」(高橋教授)

 冒頭で紹介した高橋教授のメールにあるように、九州沖から東海沖にのびる南海トラフに近いエリアで地震が頻発している事実は動かない。

 阿蘇山の爆発的噴火は真夜中だったこともあり、死者やケガ人など目立った人的被害はなかった。高橋教授は言う。

「昨年の噴火や熊本地震で地元住民は十分警戒していた。天災を封じることはできませんが、減災はできるんです」

<プロフィール>
立命館大学歴史都市防災研究所・高橋学教授
1954年、愛知県生まれ。環境考古学(環境史、土地開発史、災害史)が専門。京都大学防災研究所巨大災害センター講師、ロンドン大学考古学研究所客員教授、チリ国環境省客員研究員などを歴任。著書『平野の環境考古学』(古今書院)など多数。災害リスクマネージメント博士