いまのトランプ氏(左)はかつての姿(右)と比べて毒々しい表情に
いまのトランプ氏(左)はかつての姿(右)と比べて毒々しい表情に
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 つまり、産業によって温度差があるということ。それでもトランプ氏が米国の農家を無視して初志貫徹すれば、日本の自動車産業は大打撃を受けそうだ。

「自動車のみならず、建設機械などの輸出にも影響するでしょう。トランプ氏が円高誘導すれば、間接的に売れなくなる要因も出てくる。当然、関係企業の業績に悪影響を及ぼします。働いている人の給料は減り、失業する可能性も出てきます」(須田氏)

 景気回復どころじゃない。TPP発効による成長戦略を描いていた安倍政権もまたダメージを受ける。いまだ大多数の国民がアベノミクスの効果を実感できていない中、新たな打開策を模索する必要がある。しかし、カネをかけることはできそうもない。

「在日米軍駐留費の増額が避けられないときは、防衛予算を増やさないといけません。財政支出の大きな柱は、借金の金利の支払いを除けば、社会保障費、公共事業費、教育予算、防衛予算の4つ。

 防衛予算を増やしたぶん、手っ取り早く減らせるのは社会保障費です。高齢者が介護施設に入れない、医者にかかれない、といった状況に陥る可能性もあります」(須田氏)

 どう考えても、トランプ氏の暴走を止めるしか手はない。しかし、肝心の安倍首相はさっそくトランプ氏のもとに馳せ参じるという低姿勢だから、暴言王にプレッシャーをかけることは期待できない。