もっとも多い薬剤のうっかりミス
薬剤に関する事故は昨年1年間で260件。「確認を怠った」「連携ができていなかった」など医療スタッフの行動が原因で起こる“うっかりミス”が目立つ。
なぜ間違いが起こるのか。
「似たような外見(容器)の薬、似た名前の薬がたくさんあることも原因のひとつです。今はジェネリック医薬品も出て、名前はどんどん複雑化しています。
例えば、血流を改善する『プリンク』と胃腸薬の『プリンペラン』。それから、乳がん治療の抗がん剤『ノルバデックス』と血圧を下げる『ノルバスク』。これらは医師が“プリン”“ノルバ”で3文字検索をかけて取り違えたり、看護師に伝える際に聞き間違えたりする事例があり両薬とも改名することが決まりました」(『日本医療機能評価機構』理事・後信さん)
そのほか、高血圧治療薬の『アルマール』と糖尿病治療薬『アマリール』でも事故が多発。糖尿病患者に対し、誤って『アルマール』を処方し続け、症状の改善がみられないために量を増やしていった結果、死亡した事例が報告されている。
薬の分量を取り違えるケースも今年9月に起きたばかりだ。
国立病院機構『長崎川棚医療センター』で糖尿病の入院患者に医師が指示した量の10倍のインスリンが投与され患者が死亡。看護師が専用の注射器を使わずに測ったことが原因だった。
危ない病院の見分け方
前出の田辺さんは、危険な病院の傾向をこう話す。
「普段から医療器具が整理して置かれていない病院はリスクが高い。単純なことに思えますが、大事なポイントです。薬や器具が出しっぱなしだったり決めた場所にあるべきものが担当者や日によっては別のところに置かれていたり。少し注意して病院を見渡せば、その差に気づけるでしょう」
スタッフの数によっても医療の質は変わるという。
「人手が足りないことで現場が忙しくなれば、イライラもします。そんな状況下でミスは起きる。特に日本の病院は医者の患者対応が3〜4分であるのに、看護師の対応時間のほうが長い。
施設の規模にもよりますが、看護師がめったに顔を見せない病院は避けたほうがいい。医者の何倍も数がいる看護師の働きぶりは病院選びの目安になります。テキパキと丁寧でニコニコと笑顔の余裕が感じられるか見極めてください」
大学病院ならではの事故
第1外科、第2外科に分かれ、同じ診療分野を扱う2つの科が互いにライバル関係にある─ドラマ『白い巨塔』で描かれたような旧態依然の体制が悲劇を招いた事故を覚えているだろうか。
田辺さんが当時の騒動を振り返る。