パチンコ、パチスロの放置こそ問題
ギャンブル依存症患者が増加することも懸念される。
厚労省が'13年に調査したデータによると、ギャンブル依存症の疑いがある人は全国で推計536万人。成人女性では1・8%を占め、成人男性では8・7%に達する。世界のほとんどの国では1%前後だから突出した数字といえる。
今回のカジノ解禁法案には、付帯決議の1つとして「ギャンブル依存症患者への対策を抜本的に強化する」という項目が含まれている。
ギャンブル依存症患者の家族らでつくる社団法人『ギャンブル依存症問題を考える会』の田中紀子代表は「カジノには賛成でも反対でもない」としたうえで次のように語る。
「ギャンブル依存症の約8割がパチンコ、パチスロ。いままで放置されていたことが問題なんです。カジノで骨太の対策が進むなら画期的です」
予防教育や回復支援、相談窓口の充実などを一括推進する必要があるという。
人の不幸の上に成り立つ経済政策
前出の新里弁護士には忘れられない光景がある。江原ランドの最寄り駅にカジノ利用客の相談所があった。女の子がメッセージを書いた紙を持つポスターが貼ってあった。
「ハングル文字を読んでもらったら《お父さん、お母さん、自殺しないでください》と書いてあった。全財産を失うだけではすまず、取り立てに追い詰められて生きていけなくなる人が出てくるんです。人の不幸の上に成り立つ経済政策を進めていいのでしょうか」(新里弁護士)
IR施設は家族連れも楽しめるとされている。ママと子どもは併設の遊園地や劇場で遊び、パパはカジノ。そんな日が来るのか。
「勝って“大奮発だ”と豪華ディナーを食べに行くか、負けて“もう1回行って取り返してくる”となるか。どちらも子どもの健全育成にいいとは思えない」(新里弁護士)
カジノには、負の側面もある。そこから目を背けてはいけない。