カフェ気分で初心者も安心♪「らくごカフェ」でご満悦

 落語家には、「見習い」「前座」「二つ目」という階級があり、最高レベルの「真打」に昇進し「師匠」と呼ばれるまでに10年以上かかる。二つ目になると、ようやく高座に上がれるものの、寄席に出演できるチャンスはわずか。そこで、彼らはさまざまな場所で落語会や勉強会を開催し、客を前に落語を披露してひたむきに精進する。

 古本の街として知られる神保町にある『らくごカフェ』も、そんな若手が活躍できる舞台であり、ファンにとっては気軽に落語が楽しめる場所。火曜夜には『らくごカフェに火曜会』を定期開催。店が選んだ二つ目や若手が芸を披露する。

高座と落語グッズや書籍が常設されているカフェ。平日12時〜18時までは軽食が食べられる憩いの場。ほぼ毎晩、開催される落語会ではドリンク片手に気軽に落語が聞ける。らくごカフェ●東京都千代田区神田神保町2‐3‐5F
高座と落語グッズや書籍が常設されているカフェ。平日12時〜18時までは軽食が食べられる憩いの場。ほぼ毎晩、開催される落語会ではドリンク片手に気軽に落語が聞ける。らくごカフェ●東京都千代田区神田神保町2‐3‐5F
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 この日は、火曜会OBと称して、現在は真打に昇進した柳家小せんと古今亭文菊が登場。用意された50の座席は満席になるほどの人気ぶり。40〜60代が中心で1人客もちらほら。

「オープンから今年で9年目。落語家が芸を磨けて、落語ファンも集まれるライブハウスのような拠点を作りたい、とにかく世間の落語へのハードルを下げたいという思いで作りました」

 そう語るのは、オーナーの青木伸広さん。

「らくごカフェ」代表の青木伸広さん。近著に『面白いほどよくわかる落語の名作100』(監修・金原亭馬生/日本文芸社)など
「らくごカフェ」代表の青木伸広さん。近著に『面白いほどよくわかる落語の名作100』(監修・金原亭馬生/日本文芸社)など

 昼は喫茶店、夕方から落語会が始まる。店内には落語関連の本やDVD、落語家の色紙や手ぬぐいがズラリ。眺めているだけで、雰囲気にどっぷり浸れる。

「年間約400公演のうち300本以上は、主に二つ目の噺家さんの勉強会などの場として貸し出しています。たまに大御所の林家正蔵師匠や柳家喬太郎師匠などが落語会を開き、ネタおろしをすることも。寄席以上に客席が間近で、“ここを見られているのか”と手に取るようにわかり、刺激になるそうです

 落語家(主催者)がこの場所を1回2万円(夜の部)の料金で借り、落語家とらくごカフェの双方で販売するシステム。2000円のチケットなら10人集客できれば場所代は払えるし、それ以上なら落語家の収入となる。

「最近では、まったくの素人の方が席亭、つまり主催者になって落語会を開くことも増えていますよ。ファンがお金を出して寄席をやる機会を作るというのは、今のブームの大きな特徴だと思っています」

 会場の女性客にも話を聞いてみた。日本語教師の30代の女性は、「以前は毎週来ていたんですが、静岡に嫁いだので月に1回、上京して数日、ここで落語を楽しんでいます」

 次に声をかけた長身の女性は「談春さんの大ファンで5〜6年前からよく来ています」「お勤め先は近所ですか?」「フジテレビです」。「え?」と顔を見ると女子アナの阿部知代さん! 失礼しました。「ここはできた当初から女性のほうが多かった。女性は新しいものに抵抗がなく、未知の世界にもどんどん飛び込んでくるんです。これからも女性客は増えていくでしょうね。二つ目の噺家さんは彼女たちに支えられているんですよ」と青木さん。

 二つ目たちと女性客はまるで相思相愛だった。