“保護ねこ”とは、「ノラねこが子ねこを産んだ」と保健所に持ち込まれたり、飼い主が亡くなったり、ノラねこがケガをしたといった理由で保護されているねこのこと。放っておけば、そのまま命を落とすか、動物センターに収容され殺処分となってしまうため、ボランティアが自宅で預かるなどして保護している。

 環境省の統計によれば、2015年度に全国で殺処分された犬・ねこは、合わせて約8万3000匹。そのうち約6万7000匹がねこで、しかも6〜7割を生後6か月未満の子ねこが占めている。

 1980年代に比べると全体の殺処分数は10分の1以下に減っているが、当時は圧倒的に多かった犬の処分数がどんどん減少し続け、'00年にはねこと逆転。ねこブームの陰には胸が痛むような現実もあるのだ。

千代田モデルを全国に!

 

 こうしたなか、東京都千代田区は全国に先駆けて'11年度から5年連続、「ねこの殺処分ゼロ」を達成。全国から注目を集めている。

 発端は'00年度、区が飼い主のいないねこの去勢・避妊手術を積極的に進めるため、手術費用の助成事業を始めたことだ。その際、地域で情報を集めてねこに手術を受けさせるボランティアを募集。このメンバーが結成した『ちよだニャンとなる会』によって、'01年から現在に至るまで、区と協働で事業が行われている。

 ねこは年に2、3回、1匹が4〜5匹を出産、生まれたメスねこも半年ほどで出産できるようになるため、かなりの勢いで繁殖していく。会の副代表理事・香取章子さんによれば、

「去勢・不妊手術を進めると、みるみる路上ねこが減ったんです。その数は区が事業を始める前に比べて約5分の1となっています」

 これまで手術をしたねこは2500匹以上。それに伴い殺処分数もゼロになった。代表理事の古川尚美さんは成功の要因をこう分析する。「千代田区は病院の協力もあり手術代がほぼ全額助成されるので、ボランティアが負担なく続けられます」

 古川さんたちの活動は、飼い主のいないねこをリサーチして一時保護し、病院で手術して元の場所に戻すこと。手術後はとくに世話をせず、それまでと同じように地域の人たちにお世話してもらい、必要な情報を伝えているという。

 さらに会では、ねこを保護し、インターネットでの情報発信や譲渡会の実施で里親を探す活動を実施。区でも3年前から譲渡支援事業をスタートし、現在は保護ねこを譲渡するまで病院に預ける場合、上限4万円の入院費とワクチン等の医療費6000円が助成されるという手厚いサポートも。また昨年2月には区役所で『ちよだまつり』というチャリティーイベントを開催。ねこにちなんだセミナーや譲渡会、グッズや食品の販売など盛りだくさんで大盛況だったとか。企画を提案した古川さんは、

「実行委員会の主催ですが、無料で区役所を使用させてくれる。今年も週末の開催日に区の職員が20人ほど参加してくれます。来てくださる方が楽しめるイベントの中で、ねこを取り巻く状況や私たちの取り組みについて発信したい」