愛弟子・小倉智昭さんを見いだす
続いて大ヒットとなった『世界まるごとHOWマッチ』は、世界中の珍品、名品を現地取材つきで紹介し、値段を予想するクイズ番組で、巨泉さんと売り出し中のビートたけしとの毒舌トークが話題になった。
ナレーションを担当し、この番組が出世作となった前出の小倉さんは当時を振り返る。
「東京12チャンネルの競馬中継のアナウンサーをしているときに声をかけていただいて、巨泉さんの事務所に入ったのですが、てっきり仕事をたくさんもらえるものかと思っていたら、そこが巨泉さんの実力主義なところで、最初は競馬以外まったくありませんでした。
ハウマッチの仕事をもらえたときはうれしかったけど、出演者は石坂浩二さんやたけしさんなど個性派ぞろいだったので、当初、小倉のナレーションは普通でいいと言われました。それにほかにもナレーションの担当者がいたので、僕の担当は毎回1~2本しかなかった。
あるとき、アドリブを入れて、甲高い声でまくしたてるようにやってみたら、巨泉さんの耳にとまり、“その声、面白いぞ、小倉はそれでいこう!”と言ってくれて……みなさんに知ってもらえるようになったのです」
小倉さんはこの後もずっとどこかに巨泉さんに褒められたいという思いがあって歩んできたと言う。
巨泉さんは政治に対しても常に自分の意見を持ち、発信する姿勢を貫いていた。旧民主党の菅直人元首相から強く要請され、2001年7月の参院選に出馬、41万票超を獲得しトップ当選する。ところが自衛隊派遣の承認や安全保障法制などをめぐり党執行部と対立し、翌年1月に辞職する。当選からわずか半年足らずの幕引きに世間からは非難の声も上がった。
小倉さんは、辞職にあたり、巨泉さんと中継をつないで『とくダネ!』で放送した。
「“巨泉さん、勉強不足だったんじゃないですか?”と尋ねたら、“厳しいな”と言われました。“また『とくダネ!』出して”と言われたから、そのときは“ダメです!”と言ったんです。巨泉さんに言いたいことが言えたのは、僕だけだったんじゃないかな?」