誰のための「復興」なのか?
「復興政策は失敗です」
そう言い切るのは『「復興」が奪う地域の未来』(岩波書店)などの著書がある首都大学東京の山下祐介准教授(都市社会学)。
復興政策として、例えば津波被災地では巨大防潮堤が建設されているが、官僚のなかでも最初から批判があったという。
「巨大なハードに頼ればかえって命は守れない。なにより時間がかかりすぎる。復興は時間が命だ」
まとまれた地域では、防潮堤そのものを拒否したり、高さを下げたりしている。だがごく一部だ。「話し合いのできなかった地域には、平成の大合併による弊害がもろに表れている。震災前にやった合併も政策の失敗のひとつです」
しかも防潮堤を作ってもその内側に住むことはできない。高台移転にも時間がかかる。造成地に地域を離れた人々が本当に戻ってくるのかは見通せていない。
「防災事業がすべて悪いというわけではない。だが、そこに人が戻れないのなら何のための防災か」
原発事故の帰還政策についても疑問を呈している。
「そもそもなぜ事故が起きたのかわかっていない。事故の原因を曖昧にされて帰れるはずがない。廃炉の過程で再事故の可能性もある。余震も続いています」
被災地は、仙台市など一部を除き人口減少、高齢化に悩む。
「被災地で起きていることは全国の先行形態。復興期間はあと4年。限られた財源のなかで本当に適切な答えをみんなで見つけるしかない。そのためには、被災3県と市町村に財源と権限をきちんと委ねる必要がある。復興庁や内閣府の役割も見直すべき。だが、何より国民がこの失敗を自分のものとして感じること。この復興の失敗は、被災地がいい加減なことをしたからではないのです」
<取材・文/渋井哲也>
ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。東日本大震災以後、被災地で継続して取材を重ねている。新著『命を救えなかった―釜石・鵜住居防災センターの悲劇』(第三書館)が3月8日に発売