今年1月、銀座の一角にオープンした『羽田市場 銀座直売所』。全国各地の漁場で朝にとれた超新鮮な魚介を当日(!!)に販売する驚きの直売所として、大きな注目を集めている。
「鮮度が全然違うんですよ。職場が近くなので、ほぼ毎日ここでお魚を買って家に帰ります。子どもも肉よりも魚が好きになったみたいで、今やわが家の食卓に魚料理は欠かせない」
そう笑いながら話すのは、新橋周辺のオフィスに勤める30代のママさん。
なんとこの直売所、その日の朝にとれた全国の新鮮な魚、例えば北陸産の甘エビ、長崎県産のケンサキイカ、北海道産の生ガキといった“朝どれ”の魚介を購入できるとあって、今や銀座の隠れスポットとして知る人ぞ知る存在なのだ。
それにしてもなぜ、そんなことが可能なのか? 実は羽田市場は、その名が示すように羽田空港の貨物ターミナルの一角に鮮魚の仕分け・加工センターがある市場。朝とれたばかりの全国の新鮮な魚を空輸で羽田に送り、その日の夕方までにスーパーや飲食店に届ける、これまでの常識を覆す流通を行う唯一無二の市場なのだ。
厚岸産の大きなカキが1個200円と、驚きの安さ!
本来、鮮魚は全国津々浦々にある漁業協同組合や市場、そして築地をはじめとした中央卸売市場を介するため、漁獲から通常3日後に店舗や食卓に並べられる。
ところが、羽田市場はそれらを介さず、とった魚は当日に届けられ、しかも漁師が鮮度を保つための魚の血抜きや神経抜きを行っているので、新鮮さは段違いというわけ。
実際に直売所に足を運んで驚くのは、価格帯の安さ。空輸で運ばれてきているためお高いのかと思いきや、朝どれの長崎県対馬産のイカが1杯500円、北海道厚岸産のカキが1個(大きい!)200円など超リーズナブル。
「空輸といっても運送コストは業者価格。何より仲卸を介していないため余分なお金がかかっていないので、築地よりも安い価格で販売できる。例えば金目鯛が築地で約5000円ですが、うちは築地より早く到着して約3300円です。仲卸にかからない分の対価を漁師に還元できるんです」
そう答えるのは、羽田市場の仕掛け人にして、CSN地方創生ネットワーク株式会社代表取締役・野本良平社長。業務用食材卸を営む実家で商品開発や輸出入業務を学んだ後、回転寿司チェーンや惣菜店で役員を務めたが、利益が出ずに疲弊する産地を目の当たりにして同社を起業。「一次生産者が潤わない日本の流通を変えたい」との思いから、国に掛け合い続け、不屈の精神で羽田空港に市場をオープンさせた革新者だ。