「ありがとうございます。ごっつぁんです」
大好物のバナナを差し入れると、愛らしすぎる笑顔。初土俵(幕下付け出し)からわずか5場所で新入幕を果たし、今場所は自己最高位の小結に返り咲いた御嶽海久司(24)。相撲界の“スター候補筆頭”の素顔とは?
プロになろうなんて思っていなかった
「初めての三役(小結)として臨んだ十一月場所は6勝どまり。“御嶽海、上位だとダメじゃん”と言わせないためにも、三役に戻ったからには、まずは勝ち越し。できれば先場所くらいの勝ち星(11勝)をあげたいです」
負け越しても“内容は悪くなかった”ですまされるのは、新入幕や新三役など“新”がつくときだけ。2場所目からは、結果が求められることを誰よりも知っている。自分の相撲の注目どころは?
「前に出て、突き押しで攻め続ける“気っ風のいい相撲”ですね。逆に、相手力士と胸が合ってしまったら“御嶽海、危ない!”と思ってください(笑)。やはり、自分の相撲は豪快さが売りなので、“御嶽海の相撲を見ていると気持ちが明るくなる”と言われる力士になりたい。勝っても負けても変わらず淡々と。そういうものを目指していきたいです」
相撲を始めたのは小学校1年生のとき。ちびっこ相撲で自分よりも身体の小さな相手に負け、本腰を入れ始めた。その後は父親の指導の下、メキメキと腕をあげ実力を発揮。
「大学卒業後、プロに進もうとは思っていませんでした。公務員試験を受け、和歌山県庁から内定をいただき、両親も喜んでくれていましたから。でも、遠藤関が活躍する姿を見て、“(大学相撲で)自分もあの人といい勝負をしてたんだよなぁ”と思うと、ふつふつと湧き上がるものがありました。でも、勝負の世界に絶対はないですし……」
人生であれほど悩むことは、もうないだろうと笑う。「もし結果が出なければ、“あのとき公務員になっていればよかったのに”と後ろ指をさされる。辞退した県庁のみなさんにも申し訳が立たない。行くからには、絶対に結果を出すという気持ちで入門しました」