武史とは、入会面談に来た時にこんな会話を交わした。
「これまでどんな恋愛をしてきたか、聞いてもいい?」
「ええ。中・高・大と女性と付き合ったことがなくて、初めて付き合ったのは25歳のときでした」
「女の子に興味がなかったの?」
「いや、太っていたんですよ。90キロくらいあった。それがコンプレックスで、自分からは女の子に声をかけられませんでした。就職して鍛えて15キロやせたんです。やせたら、合コンとか行くと女の子から声をかけてもらえるようになって」
25歳の時に初めて付き合った女性も、彼女から積極的にアプローチしてくれた。
「3つ年上の人でした。3対3の飲み会をして、幹事の女の子に、『○○ちゃんが電話番号を知りたがってるから、教えてあげて』って言われて。それで電話番号の交換をして、そこから付き合うようになったんです」
彼女とは、初めて男女の関係にもなった。
「付き合い出してから、頑張りが続かない」
「そこから2年くらい付き合っていたんですけど、僕からはあまり連絡を入れないんで、『いつも放っておかれて寂しい』って言われて。で、彼女が30歳になる少し前に振られました」
マメに連絡をくれない。結婚も言い出さない。30を目前にした女性が別れを選択するのは当然のことだろう。
「彼女と別れてからも、飲み会に行くとなんとなく付き合う女性はできるんですけど、数カ月で自然消滅したり、1年くらいすると振られたり、続かないんですよね」
「続かないのは、武史さんが積極的に連絡を入れないからでしょう?」
「まあ、そうなんですよね」
「わかっているのに、何で入れないの?」
「付き合いだしたときって、こっちも頑張るじゃないですか。そのがんばりが続かないというか。女性って付き合っていくと、どんどんこちらへの要求が高くなっていくから」
そこに温度差を感じてしまうのだという。
「『どうして毎日電話くれないの』とかって。仕事で疲れて帰ってきているのに、毎晩電話できないですよ。あと、買い物に行ったりしても女性ってあれこれ迷って選ぶのに時間がかかる。だったら休みの日は、走ったり、筋トレしたりしているほうが、気が楽とか思っちゃうんですよね」
「いやいや、それじゃあ結婚できないよ」
「だからしないで、ここまできたんですよ」
確かに! 確かにそうなのだが、この性格をなんとかしなければ、今後もずっと独身のままだ。