“好き”をとことん追求すること
子どもにいろいろな人に会わせたり体験させたりする機会を与える。子どものとき『これが “好き” 。だからやりたい!』という感情を抱けることが大事なのです。
「子どもが “好き” でもないのに強制して無理やり取り組ませたとしても、それは “不当な頑張り” “徒労” にすぎません。エジソンが言った “1%の才能と99%の努力” とは、実は “1%の才能がなければ、99%の努力は徒労だ” という意味だったそうです」
ただし、この “好き” という感情には少し注意しなければならないという。
「誤解されやすいのですが、単純に “好き” という意味ではありません。子どもが “それについて学ぶことが好きだ” という意味で “好き” でないと、ただ消費するだけで終わってしまいます。
例えばゲーム好きでも、ただ “面白かった” で終わるのではなく、うまくなるためにいろいろ工夫する、もっと面白い遊び方を考えだすなど、ひとつのことを深めていく “好き” が大事なんです」
“ただ好き” と “それを学ぶことが好き” は大きな違いがある。探求心を持つことで、子どもの学習能力が高まるきっかけになるのだ。
「人間の才能や性格などの行動は、先天的な遺伝と後天的な環境からどの程度、影響されるのかについて、膨大な統計データを使って分析する学問です。もし遺伝に100%影響するという結果が出たら、親の遺伝ですべてが決まるので、どれだけ子どもが1人で努力をしても成果は出ずにムダに終わる、というわけです。 その中心となる手法は “双生児法” で、一卵性双生児(遺伝子が100%同じ)と二卵性双生児(遺伝子が50%同じ)の類似性を比較します。同じ環境で育った双子を比べて、一卵性のほうが二卵性よりも似ていれば、遺伝の影響が大きいと考えるのです。 もちろん、少数の双子の類似性を比べても統計的に意味はありません。たくさんの双子の被験者に協力してもらい、全体的な傾向を見ていき、どの程度、遺伝の影響があるかを突き止めていきます」
<教えてくれた人>
安藤寿康さん
慶應義塾大学文学部教授。教育学博士。専門は行動遺伝学と教育心理学。著書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』(SB新書)など