市民を”敵”と”味方”に分断する刑罰国家
共謀罪を考えるうえで、“戦争”とともに考えなければならないキーワードがある。
「世界で最も中間層の多い国だった日本は、小泉政権以降、規制緩和と自由競争を重んじる新自由主義の導入によって、徹底的に福祉が切り下げられていきました。中流が分解され下層のほうへ流れ、非正規雇用も増えていく。明日が見えず不安な状況のなかで登場したのが“刑罰国家”という考え。安全で安心な社会を作るため、刑罰を強化しましょうというわけです」
ここで注意したいのは、日本が世界トップレベルの治安を誇るということだ。昨年1年間に警察が認知した犯罪発生件数は過去最少を更新、戦後初めて100万件を下回った。
「人々が不安なのは、別に治安が悪いからではありません。格差が広がる厳しい状況のなかで、将来や生活の見通しが立たないからです。問題をすり替えて、取り締まりを強化する方向にもっていこうとしている」
刑罰国家の考え方の基礎にあるのは、敵・味方という発想だという。
「人々を敵と味方に分けて、敵とみなせば、徹底的に押さえ込む。そうやって味方の安全を守りましょうという、分断を生じさせる考え方です。
それを引き起こす治安強化の流れが、権利運動を抑制する流れと融合し始めてきているのではないでしょうか」