古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第20回は山名宏和が担当します。

星屑スキャット 様

 今回、勝手に表彰させて頂くのは星屑スキャットさんである。

 星屑スキャットって誰だ? そう思った方も多いだろう。星屑スキャットとは、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人による、新宿2丁目生まれの音楽ユニットである。

星屑スキャット。写真左からミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムー 写真:下村しのぶ (Flamingo)

 実は僕も彼ら(彼女ら?)のことは昨年夏、『The Covers』(NHK BSプレミア)のゲストに来るまで知らなかった。ゲストに決まって資料をもらってはじめて、彼らのことを詳しく知ったのだが、正直、「大丈夫か」という思いが強かった。

 というのも彼らの直前の回のゲストは鈴木雅之、直後は渋谷系の歌姫・野宮真貴。さかのぼれば、井上陽水、福山雅治、吉井和哉、エレファントカシマシなど有名実力派アーティストがズラリと並ぶ。その中に、イロモノ感満載の彼らを登場させて番組イメージが損なわれないかと心配になったのだ。

 しかし、司会のリリー・フランキーさんは昔から彼らの大ファンだという。頼まれてもいないのに彼らのためにオリジナル曲を作って、持ち込んだほどの惚れ込みようだそうだ。なるほど。リリーさんが太鼓判を押すなら大丈夫だろう。たぶん。

 そして迎えた本番。僕も収録に立ち会った。確かに、その見た目をいい意味で裏切る素晴らしい歌声だった。

 だが今回、彼らを表彰したいのは、その歌声についてではない。出演前の打ち合わせの話である。

 この番組でカバーする曲は、基本的には出演者に決めてもらうが、こちらから、「たとえばこういうのはどうでしょう」と候補曲を挙げることもある。星屑スキャットの時も何曲か用意していった。女装の3人だから杏里の『CAT’S EYE』とか、そんな選曲だったはずだ。

 だが、そんな安易な選曲はまったくあっさり無視された。そして、これまでに番組でカバーされてきた曲の一覧表が欲しいと言われた。