公開中の映画『八重子のハミング』で、升毅が芸能生活42年にして初めてとなる“主演”を果たした。これまで“バイブレーヤー”“いぶし銀”と称され、名脇役として活躍してきたが、初主演を務めるにあたっての心境をインタビュー!
「単純にうれしかったですね。やはり主演はやってみたかったですから。ただ、実在する方のお話なので演じるうえですごく重みがありました」
映画『八重子のハミング』のオファーを受けたときの心境を、役の重みを噛みしめるようにこう表現した。
升が演じたのは、自らも4度のがん手術を受けながら、若年性アルツハイマー病の妻を介護する夫の役だ。
現場の雰囲気作りで心がけたことを聞くと、芸歴の長い彼にしては意外な答えが返ってきた。
「今回はそこまで至りませんでしたね。周りのことを考えている場合じゃないぞという気持ちが強かったです。自分が主役をできるかどうかわからなかったんですよ」
これまでに経験したことのない苦労だったと続ける。
「今まで演じてきた役というのは、台本を読んだときに “このときはこういう感じかな”というふうにイメージができていました。そういった自分の中での段取りやイメージ作りがあるのですが、今回はそれを作ることがすごく難しかったですね」
しかし、撮影に入ると、それまでの不安がスーッと消えたというから、さすがはベテラン俳優だ。
そして、プレッシャーのかかる撮影の中でも楽しかったことがあったという。
「(妻役の高橋洋子さんと)仲よく夫婦一緒に過ごしているような楽しさがありましたね。お仕事をしているという楽しさではなく、本当の夫婦や親子のようにいられたことがよかったです」
この映画では、ある特定のシーンを見てほしいというわけではないそうで、
「“家族っていいな”と思う方、“自分もこんなふうに優しくなりたいな”と思われる方など、人それぞれ感じ方が異なると思います。ただ、見た方それぞれが必ず何かしらのいいものを持って帰っていただける映画だと思います」