紙デジ導入で困るジャニヲタ
そして、コンサートでの席位置にこだわるジャニヲタ(通称:コンサガッツ)たちは、絶望の淵に立たされる。もう好きな席でタレントを見ることはできないのだ。
一度、最前列でコンサートを見てしまったらもう、戻ることはできない。ジャニヲタにとって、コンサートとは会いに行くものなのだ。
自分の1メートル先に好きなタレントが立ち止まり、歌って踊る。ターンするごとに汗がキラキラと飛び散る。マイクに入る前の生声が聞こえたりするこもある。
そして「この席にもう1回でいいから入りたい」とチケットを追加で購入していくのだ。そう、この臨場感にはかなりの中毒性がある。なかには「好きな席に入れないのならもうジャニヲタを辞めたい……」と嘆く人も少なくない。
一般の方には理解が難しいかもしれないが、「コンサガッツ」を含め、だいたいのジャニヲタが複数の公演を観覧している。「1度しか見ない」という人のほうが少ないとさえ思う。
わざわざ地方にまで行って“クソ席”で見たいだろうか。
もしかしたら立ち見かもしれないというリスクを抱えながら遠征したいだろうか。北海道など、ジャニヲタが行きづらい場所のチケット申し込み数が減ることは目に見えているように思う。現状、紙チケですらも札幌ドームは埋まりづらいことを考えると、事務所も何かしら対応に迫られるのかもしれない。
座席にこだわらないジャニヲタですら「事前に席が分からないのはモチベーションが上がらない」と言っている。公演前に届くチケット入り封筒をドキドキしながら開けるのもひとつの楽しみなのだ。
「アリーナだ! もしかしたらいい席かも!」と分かりコンサート当日までウキウキしながら過ごす。洋服を買ったりネイルへ行ったり……デジチケはその楽しみを奪ってしまうのだ。
ジャニーズのグループもその真価が問われる。
ファンサ(ファンサービス)が多いグループは衰退し、エンタテイメントとして魅せることができるグループのみが生き残るのだ。照明、転換、映像、衣装……すべての演出につけてジャニヲタの見る目は厳しい。
デジチケ導入のせいで、ジャニヲタのモチベーションが下がってしまうと、ほかの場所に楽しみを求めてしまうことも考えられる。座席にこだわるジャニヲタの熱量も下がり、より自分が輝ける場所へ流れていくだろう。
かくして、ジャニーズ離れ=ヲタ卒が増えると推測されるのだ。そして、デジチケで困るのはジャニヲタだけではない。事務所も相当なダメージがあるのではないかと思う。
というわけでジャニーズ事務所さん……、デジチケやめない?
<著者プロフィール>
菱ユーキ(ひし・ゆうき)◎ライター。ヲタク経験値レベル100。ジャニヲタ歴30年。アラサーヲタクの代弁使。かつてはメルマガで約1万人以上もの購読者を誇った。
<イラスト>
星野グミ子(ほしの・ぐみこ) ◎イラストレーター。バンドや俳優、アニメなど何かといろんなジャンルの沼にはまりがち。オフィシャルブログ『ハマったもん勝ち 沼ガール!』を運営中。
<今回のジャニヲタ用語集>
【ヲタ卒】ジャニヲタを卒業すること。
【コンサガッツ】席位置にこだわるジャニヲタのこと。