ほかにも保冷車で材料を運ぶ、'17年1月15日まではキャンセル代が無料、テントやテーブルなど出店セットの無償提供、有名タレントのサプライズゲストも出演予定などと偽り、飲食店をだました。
再び前出・荻上弁護士の話。
「パンフレットではテント設営となっていますが、東京会場の味の素スタジアムはキッチンカーでしか出店できないし、大阪会場の舞洲スポーツアイランドは火気厳禁。帳簿なども一切つけていない。会場には昨年11月頭と12月頭に、料金の一部を支払っていますが、開催するつもりだった、だます意思はなかったと主張するためだったのでしょうね」
個別の被害金額が少ないことで、捜査人員を要する詐欺事件として警察も動かないと容疑者らは高をくくっていたようだが、誤算が生じた。
消えた1億円
「100万円を渡し、雇われ社長にしていた中井が、田邉が金を持ち逃げしたと破産手続きをしました。破産管財人がつき、持ち逃げをしたとなると横領にあたるとして、管財人が警察に接触し、捜査が始まったという経緯があります。幹部のひとりはNYにいるようですが、怖くて帰れないのでは」(前出・荻上弁護士)
前出・被害者の会代表の鈴木さんは、5月に開かれた債権者集会に出席した。
「中井と大須が出席していましたね。中井はスーツ姿で、大須は私服でひげも伸びていました。2人とも上からの指示で、何も知らないと語るばかりでした」
破産会社には、人件費その他の諸経費が、いつ誰にどれだけ支払われたかというデータが一切ないばかりか、後に逮捕される面々は、今年1月以降、やりとりしていたメール、LINEなどが一斉に破棄されていた。顧客の申込用紙も中井容疑者がシュレッダーにかけ破棄。誰の指示で“証拠隠滅”をはかったのか。
破産管財人を務める笠井総合法律事務所の笠井直人弁護士は、
「東京と沖縄に勧誘の拠点があったのですが、東京は矢野と大須の話や矢野が領収書を保存していたので、だいたい洗い出すことができました。沖縄は田邉がやっていて経費がどう使われたかはブラックボックスなんです。中井も最初は矢野側についていましたけど、最後は田邉のスピーカーになっていました。彼は働いてもないのにどうやって生活していたんでしょうね。今は留置場にいますけど」
管財人として聞き取り調査をする中、言い分の違いも如実になったという。
「聞き取りで大須は3500万円を田邉に渡したと言っていますが、田邉は2000万円しかもらってないという。ただ田邉は1月27日から3月1日までイベントの開催期間をまたいでフィリピンに行っているんですよ。金を持って逃げたとみられてもしょうがないですよね。どちらかがウソをついているのでしょうけど、後は警察にお任せするだけですね」
破産管財人管理口座の残高は約2750万円。1億円以上の金額が消えたままだ。