母親や宮崎容疑者を妄信した被害者に、両容疑者は今、どんな思いを抱いているのか。
「母親は暴行の事実を認め、“やりすぎたかもしれない”と言っているそうです。ただし、これは修行に集中させるためのしつけで、修行中にA子さんがよそ見をしたり、集中力が切れると、叩くなどの暴行を繰り返していたそうです」(県警捜査担当者)
一方の宮崎容疑者は、暴行の事実はあったものの共謀していないと逮捕事実を認めておらず、謝罪の言葉もない。
「バリカンで刈ったのは川口容疑者に脅されてしかたなく。私は霊能力はあるが、霊能力者を自称していない」
と弁護士を通じ、主張する。
「妻を止められなかった」
宗教社会学者で北海道大学文学部の櫻井義秀教授は、
「青森には『カミサマ』といわれる霊能力者が昔からいます。A子さんに『カミサマ』の素質があると見込んだ霊能力者にすすめられ、母と娘がその道に行こうという意思のもとで修行したということなら説得力がありますが……」
と可能性を探りつつも、
「A子さんはまだ自分で状況を判断できない年齢です。母と霊能力者が修行を強要し、身体的にも彼女に加害行為をしていたとされるならば、それは宗教の名を借りた暴力。今回の行為は行きすぎているものといえます」
事件の背景についても、
「川口容疑者がなんらかの形で抱えていた精神的な弱さを解決するすべが霊能力という言葉で利用されたのかもしれません。本来はまず行政やカウンセラーなど、しかるべき機関につなげることです」(櫻井教授)
容疑者の家族は何も不審に思わなかったのだろうか。前出の住民は言う。
「2人の夫は仕事が忙しかったらしく、近所でほとんど見たことがありません」
報道では、川口容疑者の夫は家族と向き合う時間が少なかったことを明かし「修行には反対したが、妻を止められなかった自分にも責任がある」と悔いている。留守がちな夫への寂しさや慣れない土地での生活。心の隙間を埋めてくれたのが“霊能力”だったのではないか。
A子さんは今、安全な場所に保護され学校へ通っている。
「家族の関係回復のカギを握るのは父親の存在です」
前出の櫻井教授は言う。
母と娘との和解の日は来るのだろうか。“神頼み”ではなく自分たちの力で解決しなくてはならないようだ。