ペットを大切な家族の一員として位置づけるようになった昨今では、人間同様の供養方法や、在りし日を偲(しの)ぶサービスが増えてきているそう。宗派にとらわれた堅苦しい決まりはないというから、自分たちなりの納得した方法で思い出を温められるというメリットが。そんな最新事情をご紹介します。
◇ ◇ ◇
たくさんの愛情を注いで、一緒に暮らしてきたペット。しかし、いつの日か必ず別れが訪れます。
悲しいけれど、旅立ったあの子を、心を込めて送り出してあげるのが、飼い主さんができる最後の親心です。
かつては、ペットが死ぬと家の庭や近くの山に埋める家庭もありましたが、最近はペットをきちんとした形で供養してあげる風潮が高まっています。
しかし、「ペット供養って何?」「死んでしまったら、何からしてあげればいいの?」という人も多いはず。
「明確な決まりはありません。ですが、いろんな情報を知れば、自分なりの納得のいく方法をしてあげることができるともいえます」と語るのは、最近のペットとのお別れ事情に詳しい『キャットシッターmedel(メデル)』 代表の今村かなえさんです。
「人間の場合は、法要や納骨など、宗派によって供養の細かな決まりごとがありますが、ペット供養はそういったルールがないので、飼い主さんの納得いく形で送り出すことができます」
一般的には、ペットの死亡を確認した後、適当な大きさの箱にタオルやシーツを敷いて、その上に遺体を納めます。その際、遺体が傷まないよう、保冷剤を入れること。
「保冷剤がなければドライアイスなどで代用しても大丈夫です。そして、しかるべき施設に行き、火葬します」
納骨をしないで自宅供養もあり
その後、ペット霊園に納骨する場合もありますが、「納骨しないという選択肢もある」と、今村さんは言います。
「ペットのお骨をどうするかは、飼い主さんによって異なりますが、手元に残しておく手元供養を選ばれる方が多いです。人とペットという関係性上、手元に置いておく、そばにいてほしいという感情が強いのだと思います。それを、ペンダントにしたりジュエリーにしたり、お家の中に祭壇を作る方もいます。飼い主さんとペットが同じお墓に入ることは、現状ではなかなか難しいのですが、ペットのお骨を手元に置いておいて、『いつか一緒に入れる日を待つ』という方もいますね」
ペットが死んでしまった直後は、悲しみとつらさで冷静な判断ができない飼い主さんがとても多いそう。なので、「どうやって供養するかを落ち着いた状態で決めてほしい。また、ペットが元気なうちから『その日』が来ることを、ネガティブにではなく前向きにどこかで考えていてほしい」と、今村さんはアドバイスします。
しかし時間がある程度、経過しても一向に悲しみから抜け出せず、ペットロスに陥る人も少なくありません。
「毎日、朝起きると同時に涙が流れるんです。それが数週間続きました」と語るのは、漫画家のかなつ久美先生。自らをイヌバカと自称するほどの愛犬家であるかなつ先生もペットロスに苦しんだ経験を持ちます。ポメラニアンのりんごちゃんが2016年、突如、旅立ちました。その日から、かなつ先生のつらい日々が始まります。
「りんごちゃんはわが子同然の存在でした。いつもそばにいてくれた子がいないという現実が毎朝襲ってくるんです。街で同じ犬種のわんちゃんを見るのもつらかったです」
ペットロスは一時的に終わることもあれば、何年も苦しみ続ける人もいます。ペットロスが原因で、精神的に弱り、自ら命を絶ってしまう人も現実にいるのです。
しかし必ず乗り越えられると、かなつ先生は言います。
「私が当時、実際にやったことは思い切り泣くことです。毎日声をあげて泣きました。我慢せずに泣きまくることで、苦しみが和らいでいきます」