1枚の写真がある。平成元年(1989年)5月29日、誕生日を祝う大きな特製のケーキにナイフを入れようとポーズをとる美空ひばりさん。入院中の病室で撮られたと見えて、パジャマ姿にノーメイク。かたわらには長男・和也さんが、はにかんだ笑顔を浮かべて立っている。
写真から約1か月後の6月24日、昭和の歌姫・美空ひばりさんは、惜しまれつつ世を去った。まだ52歳の若さだった。
あれから30年─。
元号が『令和』に変わった今も、ひばりさんは人々に愛され続けている。
目をつぶって聴いてほしい
熱心なファンの集まり『美空ひばり後援会』では、毎年欠かさず「生誕祭」を開き、フィルムコンサートなどでひばりさんを偲んでいる。中心メンバーの3人、網中紀子さん、尾松不美江さん、河野ルミさんに話を聞いた。
網中「私たちにとって5月29日は特別な日です。ひばりさんがオギャーと生まれてきたからこそ、たくさんの素敵な出会いや思い出ができた。平成2年に“みんなで集まってビデオを見ようか”と何の気なしに声をかけたら、銀座の『十字屋ホール』に入りきらないくらいの人が集まって」
尾松「急きょ昼夜の2回やりました。翌年は『新宿シアターアプル』、さらに翌年は『日比谷公会堂』と会場が大きくなって、ここ数年は『浅草公会堂』でやっています」
河野「フィルムコンサートは毎年内容が変わって、ひばりプロさんが映像を編集してくれるんです。オープニングにも締めくくりにも、ふさわしい曲がいっぱいあるから、どんな構成か楽しみです」
網中「前半の第1部は、映像なしで名唱・名歌を聴いてもらいます。みんなに目をつぶって、ひばりさんの歌だけを聴いてほしい」
尾松「ナビゲーターには今年も神津カンナさんを迎えて、MCの私がお話を聞く予定です。カンナさんは中村メイコ先生の娘さんだから、ひばりさんのエピソードをいっぱいご存じで、すごく好評です」
3人とも半世紀以上にわたる熱心なひばりファン。