「昔からよく知っているけど、おとなしいタイプ。急に2人(父と兄)が亡くなりパニックになったんじゃないかな」
そう話すのは、容疑者と同じ町内で暮らす80代の女性だ。近隣の80代の男性は、
「あいつは気が小さいから、ひとりでは手に負えなくてどうしたらいいのかわからなく逃げちゃったんだと思うよ」
不信感を募らす近隣住民
山梨県警北杜署は8月18日、男性2人の遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄容疑で同県北杜市の無職・三井公彦容疑者(52)を逮捕した。
その人物像を浮かび上がらせるのが冒頭の近隣住民による証言だ。パニックが引き起こした遁走(とんそう)という見立ては、
「父と兄が死んで困ってしまった。何をしたらいいのかわからなくなってしまったと話している」(全国紙社会部記者)という供述内容とも合致する。
捜査関係者も、
「解剖の結果、遺体には殴られたり絞められたり、刺されたりなど外見上の損傷はない」
と明かし、事件性については引き続き捜査中としたが、殺人の可能性は低い。
事件発覚のきっかけは、8月3日に地元で行われた夏祭りでの何気ない会話だった。
「公彦さんはまじめで優しく、明るい感じの人。夏祭りで焼きそばを配ったり、カラオケで盛り上げてくれました。ところが今年、家族は誰も来ていなかった。みんなで“どうしたんだろう”と話し、様子を見に行ってもらうように頼みました」(別の80代女性)
実は別の住民たちも、見かけなくなった三井家の人々のことを気にかけていた。
近隣の男性住民も、
「親父の姿が見えなくて、聞けば“元気にしています”と。“病院は?”と聞くと“1か月に1回くらい行っています”と言っていたけど……」
と不信感を募らせていた。
市の担当者が経緯を明かす。
「“父と兄の姿が見えない”と、近所の人たちに相談され、まず7月29日に訪ねました。公彦さんが、玄関の扉を顔の幅くらいまで開けたんです」
“お父さん、お兄さんは元気ですか?”
“元気です”
“また来ますね”
容疑者は何も言わずに扉を閉めたという。
「市の介護支援課の職員と相談し、夏祭り後の8月8日にもう1度訪ねました。玄関も窓も全部施錠されていて、呼びかけても反応はなかった」(前出・市の担当者)