昨年の日本人の平均寿命は女性87・32歳、男性81・25歳、いずれも過去最高となりました。しかし日本が世界でも指折りの健康長寿大国になったのは今から40年ほど前のこと。それにはどんな理由があったのでしょう? この疑問に鋭く迫るのが、縄文時代から現在までの日本人の病気と食の歴史をひもとく本書、『日本人の病気と食の歴史』です。
健康長寿に根付く食文化を辿ってみた
「当初、『和食は健康食』という内容で依頼をいただいたのですが、そこへ歴史の要素を入れるとより面白くなるのではないか、ということになり、私も歴史好きなので、どうせなら縄文時代から書いてみようと思ったんです」
著者で予防医学のスペシャリストである医師の奥田昌子先生は「日本では50年ほど前から生活習慣病が問題になり始め、大腸がんや乳がん、糖尿病、アルツハイマー型認知症など、高齢化の影響を差し引いても発症率が急上昇した」と指摘します。
「この背景には、内臓脂肪がつくようになったことがあるんですね。しかし、それよりも昔の日本人には内臓脂肪がつかなかったし、生活習慣病も少なかった。そうであるなら歴史をたどれば、現代型の病気を防ぐヒントが得られるのではないか、と考えたんです」
多くの論文や本、浮世絵などにまで目を通し、なんと執筆に2年も費やしたという奥田先生、約1万年に及ぶ歴史の中で、日本人が経験した大きな転換期についてお聞きすると、「米作りが始まった弥生時代と、食の欧米化が進んだ1960年ごろ」とのお答えが。