「先日、うちの倅(せがれ)のインタビューを載せていただいて。すぐに買いに行きましたよ!」

 そう楽屋で明るく出迎えてくれたのは、歌舞伎俳優・市川右團次

 近年は『陸王』などドラマや歌舞伎以外の舞台、バラエティー番組への出演も話題となり、さらにはオペラの演出を手がけるなど活躍の幅を広げている。

秋元康演出の新作に出演

 忙しい中での年末年始はどう過ごしていたのか聞いてみると、

「大みそかまでお稽古で。元日はお休みですが、朝から先輩方のところへ10数軒、ご挨拶に回るんです。そして2日はまたお稽古で、翌日はもう初日。お正月だからといって、のんびりはしていられませんね(笑)」

 3日から新橋演舞場で始まった『初春歌舞伎公演』。毎年、市川海老蔵など豪華な顔ぶれがそろう、1年の幕開けを飾る恒例の公演だ。十三代目市川團十郎白猿襲名を前に“海老蔵”としては最後となる正月の歌舞伎ということで、今年は一段と大きな盛り上がりを見せている。

「そんな記念すべき公演で、市川家の一員としてご一緒させていただけるわけですから、すごく幸せです」

 と本公演への思いを語った右團次。中でも注目を集めているのが、新作歌舞伎NINJAKABUKI『雪蛍恋乃滝』。なんと、あの秋元康が初めて歌舞伎の作・演出を!

後ろに映っている化粧前(鏡台)について、「みなさんでいえばオフィスの机と同じで、役者によってキレイにしている人もいれば、台本が山積みの人がいたり、人それぞれです(笑)」。襲名の際、指物屋さんに頼んで作ってもらったそう 撮影/近藤陽介
後ろに映っている化粧前(鏡台)について、「みなさんでいえばオフィスの机と同じで、役者によってキレイにしている人もいれば、台本が山積みの人がいたり、人それぞれです(笑)」。襲名の際、指物屋さんに頼んで作ってもらったそう 撮影/近藤陽介

「かなり前にラジオで共演させていただいて以来で、まさかこういう形でまたご一緒させていただくとは思ってもいなかったので、うれしかったですね。僕ら役者が意見を出し合ったり、秋元さんにもこだわりがあったりして、台本ができあがってからも何度も修正が入ったりと、思った以上に難航しました(笑)」

“でも、そのぶん、いいものになったんじゃないかな”と笑顔。

「舞台美術や照明にはブロードウェイで活躍している方をお招きして。歌舞伎って様式性を重んじるところがあるから、あまりはずれてしまうと歌舞伎でなくなってしまうし、僕らがやる意味もなくなってしまう。だから、その“枠”の中でどこまで広げられるかなんです。これまでとはひと味違った歌舞伎を楽しんでもらえると思います」