就職や転勤、進学などで4月から新生活を始める人も多いはず。新居探しはワクワクするけれども、油断していると“ハズレ”をあてがわれることも。国が業界基準づくりに乗り出した賃貸住宅の取り扱いの実態は──。
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新住人には誰も“事実”を知らせず
「九州地方に住んでいたときの話。築40数年のアパートでシングルマザー世帯と顔見知りになったんです」
週刊女性の30代女性編集者は実体験をそう切り出した。
「母親は40代で娘は10代後半。娘の交際相手が部屋に転がり込んできて、次第にヤンキーのたまり場になっていきました。母親は、娘とその交際相手から暴力をふるわれるようになるとアルコールに溺(おぼ)れ、やがて亡くなったんです。死因は住人には知らされず、娘が引っ越していったので“事故物件になったのではないか”と噂が立って……」
と振り返ると、怪訝(けげん)な表情で続ける。
「ところが、不動産会社のホームページで物件情報をチェックすると『告知事項』が掲載されておらず、家賃もほかの部屋と変わらない。空き家になった母娘宅はすぐに入居者が決まりました。母親が亡くなったときは警察や救急車が来て大騒ぎだったのに、新しい住人は何も気にしていないようでした」
住人たちは誰も、新住人に“以前の入居者が不審な亡くなり方をしたのを知っていますか”とは聞かなかったという。
「難癖をつけているように思われるのはイヤだし、不審死とする確証もなかったので」
と同編集者。
つまり、新住人が不動産業者から告知されていなければ、事実を知らないまま生活していることになる。
殺人や自殺、孤独死、変死などで主(あるじ)を失った住居は「事故物件」と呼ばれる。それが賃貸でも売買でも同じで、人によってはそのあとに入居するのをためらう。
国土交通省はこのほど、そんな事故物件の取り扱いを明確にしようと有識者検討会を立ち上げた。メンバーは不動産業者の団体や消費者団体、弁護士、学者など。2月5日に初会合が開かれ、適切な不動産取引のガイドライン(指針)作成に向けてさまざまな観点から議論を重ねていく。
「宅地建物取引業法の書きぶりがわかりにくいとの指摘があった。
建物の一部が壊れているなど物理的な損傷はわかりやすいが、人の死に関するものは個人の主観によって“イヤだ”“気にならない”と分かれることもある。仲介業者はこうした心理的負担についてどこまで説明すべきか、一定の基準を定めることができれば安心できる取引につながるだろう」(国交省の担当者)
業者の告知義務について、巷(ちまた)ではよく、
“自殺物件は次の入居者には知らせなければいけないが、間に1人挟めば、もう知らせなくてもいい”
と囁(ささや)かれる。