里親に応募して、犬・猫をだまし取る『里親詐欺』が多発している。その目的は虐待や売買などとみられ、過去には逮捕され有罪になったケースもある。言葉巧みに近づくその手口とは──。
プロも騙される巧妙な手口
『里親になります。大切に育てます』。そう申し出て、猫や犬をもらい受けながら転売や虐待などをする「里親詐欺」が問題になっている。
一般社団法人 動物愛護団体『愛の肉球会』監事の今津秀行さんは、
「春から秋くらいまでの子猫が生まれる時期は詐欺被害が多くなります」
加えて今年は、新型コロナウイルスの被害が蔓延し、終息のめどが立っていないという悪条件も重なる。猫の保護活動を行う、NPO法人『もふっこひだ』理事長の袈裟丸聡美さんは危惧する。
「今、(保護を願う)問い合わせが増えています。犬猫は生活の中で最も弱い立場なので、コロナ騒動でも大きな影響を受けると思います。収入もなく、家賃も払えないとなれば飼っている動物のえさも買えず、手放すことを考える人は出てくるでしょう」
面倒な手続きを省いて一刻も早く手放したいと考える飼い主がSNSなどを通して個人間取引を呼びかける→それに詐欺師らが食いつく、という構図ができあがる。
通常、里親になりたいと思っても犬・猫の引き取りにはお金がかかることがある。
袈裟丸さんが明かす。
「注意深くやっている団体は譲渡する場合に少しお金が必要なことがあります。譲渡する犬猫の飼育費、避妊代、ワクチン代などどんな健康な子でも検査や治療などを含め、3万~5万円は費用がかかります。その一部負担分くらいをいただきます。すべてを団体の持ち出しだけでやっていたら活動自体もつぶれてしまいますから」
ところが、最初からだますつもりの人間は出費を惜しむ。前出・今津さんは、
「詐欺を働く人間は、費用がかかることまではやろうとしない。無償でもらえる子に応募するんです」