ブログで公表し、大きな反響を呼んだダウン症の次男・美良生君は、障がい者と健常者がともに学べる小学校に通う。同級生よりもゆっくりと成長する息子は、計算は苦手だが、ひらがなとカタカナが読めるようになった。わが子の将来を案じつつ、今を大事にする“奥山流”子育て。

とんでもないモンスターがやってきた

 その明るい笑顔と飾らない人柄で、バラエティー番組などでも活躍している女優の奥山佳恵さん(46)。新型コロナ感染拡大による自粛期間中は、神奈川県藤沢市の自宅からテレビにリモート出演するほかは、家族で過ごした。

 2人の息子は学校が休校になり、高校3年生の長男、空良そら〕君(18)はスマホを片時も離さず、朝から晩までソファの上でゲームざんまい。

「いいかげんにしろー!」

 イライラがつのった佳恵さんが思い切り怒鳴ると、別の部屋にいた小学3年生の次男、美良生みらい(8)がスッと入ってきて、母の目を見据えて穏やかに言った。

「ママ」

 佳恵さんはそのひと言でハッとして、われに返ることができたという。

大人みたいな目で、やさしくママってもう、後光が差していましたね)。美良生には、できないことはいっぱいあるけど、できることもあるんです誰でも得意不得意があるようにね

 美良生君はダウン症だ。染色体の突然変異による先天性疾患で、発達の遅延、知的障がい、独特な顔立ちなどの特徴がある。

 2011年9月に自宅出産で生まれた美良生君は身体が小さく、母乳を飲む力が弱かった。黄疸が出て生後2日目に入院し、心臓に穴が3つもあいていることがわかった。ダウン症は心疾患を伴うことが多く、美良生君は生後半年間で4度入院し、2度の手術を乗り越えた

 今は笑顔で話す佳恵さんだが、わが子の障がいを受け入れるまでは1年以上の長い時間がかかった。

「この先、何が起こるかわからないから不安で、とんでもないモンスターがやってきたと思って。どこに落とし穴があるかわからない真っ暗闇の山の中に入って行くような恐怖を感じましたね。きっと家の中はめちゃくちゃにされて私は仕事もできなくなるだろうと……」

 美良生君を寝かしつけ、ひとりで洗い物など家事をしていると、不安が襲ってくる。そして、マイナス思考が止まらなくなる──。

健常児に産んであげられなくて、ごめんね

私のせいだもっと早くに産んでいれば……

 自分を責めて、泣いた。