あの人気番組が終了して7年。いまだに注目の的であるビッグダディ。ほとんどの子どもが成人し、孫までいるという彼は、いま一体、何をし何を考えているのか。さすらい続ける彼には、驚くような新たな出会いもあったという──。人間の深層を描かせたら日本一の作家・岩井志麻子が、彼の本質に挑む。彼が“ビッグ”と呼ばれる理由を分析した!

 

“ビッグダディ”はぴったりな尊称

俺は避妊はしない

 初めて、目の前に来たビッグダディ。のっけからもう、ビッグダディ節が全開。そして、なんだかわからないがものすごい「圧」がある。

なぜなら俺の子を産みたいという女としか、やらないからです

 曖昧な言い方、行間を読め、空気を察しろ、それらはダディの辞書にはない。

 なのにいつの間にかふわっと威圧感はなくなり、懐を開いて腹を割った話ができる同世代のおもしろい人、になってしまっていた。

 テレビの大家族シリーズの人気者、ではあるのだが。今現在は、東京・江東区の居酒屋「デリム」の店長だ。それでもやっぱり、店長というよりビッグダディ

 改めて、この二つ名に感心する。この方はまぎれもなく有名人なのだが、本名よりもニックネームのほうがよく知られている。

 テレビ欄や雑誌でも、見出しにはそちらが使われていることのほうが多い。

 そういう私も彼を、ニックネームのほうで記憶していた。彼について書きませんかといわれ、本名を出されたとき、ちょっと戸惑ったのだ。

林下清志さん……、えっと、誰だっけ。ああ、ビッグダディか」

 と、ここまで書いて気づく。ビッグダディはニックネームでありつつ、芸名でもあるのだな、と。たいていの芸能人も文化人も、芸名や筆名こそがその人になってしまっている。本名を先に出されると、かなり高名な人でも誰それ、となる。

 ともあれビッグダディという名づけは、本人にこれ以上なく、ぴったりな尊称だ。語感、意味ともに。もし別名に言い換えるとしたら、ゴッドファーザーくらいしかない。名は体を表す。