デビュー50周年、108枚目のシングル発売、NHK紅白歌合戦に34回出場……記録はもとより、圧倒的歌唱力とパフォーマンスで記憶にも残り続けるオンリーワンの存在。常にエンタメ業界の最前線を走り続ける男が、一瞬だけ足を止めて語ってくれた濃密な50年―。
歌手の本質はひとつ。「歌がうたえること」
年齢を重ねることって、僕自身は、ネガティブな材料は何もないなって思うんですよ。例えば女性の方々も、若さだけでちやほやされる時期って10代から30代くらいでしょう。ということは、人生のどこに照準を合わせて充実させていったらいいかは、火を見るより明らかですよね。
「自分が人として、どんなふうになっていきたいのか」を見据えて日々を積み重ねていくうちに、そこに経験やキャリアという武器を手にするわけですから。年をとるということは、それだけたくさんの武器を手に、人生を歩んでいけることだと考えています。
その中で僕自身、いろんな人たちの生き方を参考にしながら、自分に合うものを取り入れてきました。その最たるものがパフォーマンスなんですが、僕がいちばん大事にしてるのは「身体のキレ」なんですよ。それはある人のパフォーマンスを見たときに「瞬時に止まってる!」と思ったんです。本人はそう思ってないかもしれないけど、僕はそう解釈して「これを自分に取り入れていこう」と思いました。
だから、動いてるものが止まる、急ブレーキをかけるみたいなことですよね。で、方向を変えて次に向かうという。そうやって自分の中で咀嚼してやっているうちに、それが見ている人に「キレがあるな」と捉えられるようになってきたのかもしれない。
今はたまたま動きの話をしましたけど、そうやって参考にしながら、自分らしく表現して、自分らしく生きられればいいな、と思っています。
ただ、正直なところ僕は年齢ってあんまり考えてないんですね。10月の誕生日がくれば「あぁ、67歳だな」とは思うけど、だから何?って(笑)。
それはあくまでも目安なんです。例えば、僕は週3回トレーニングをしてるんですが、「今日は10回できる」というのも目安でしかなくて。正しくないフォームで12回やったところで無駄なんです。正しいフォームで、できるところで止めていいんですよ。
同じように年齢も、世間一般のイメージはあるかもしれないけど、僕は僕なりにやっていくよって。自分の身体に、自分のマインドに正直にありたいというだけなんです。
あまり過去を振り返らないタイプですし、未来というのもあくまでも予想で、次々に新しいものが生まれてくるから、予想と違うことが起こるというのを考えたうえで歩んでいけばいいんじゃないかな。
僕ぐらいの年齢になると、身体の水分量って、どんなにお水をとっても50%ぐらいなんですよ。だから、身体が硬くなってきても当たり前なんです。でも、少しでも柔らかくいれば、ケガのリスクも少なくなる。同じように僕は、心も柔軟でありたいんです。
どんな未来であっても、次々に対応できる自分でありたいなって。だから、ひとつのことをやっていくのではなくて、2つ、3つのことをやっておいて、柔軟に自分の体勢を変えていきたい。そういう心の柔軟性というのは大事なんだろうなって思います。