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ー 「碧が活躍しているからこそ負けたくない」
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ー 人間としても認め合って

 ドイツ・スペイン撃破という、前代未聞のニュースで日本を沸かせた今年のワールドカップ。惜しくもベスト8は逃したものの、強豪に競り勝っての結果に早くも次回への期待が膨らんでいるファンも多いはずだ。

 どの試合も心を震わせる名シーンばかりだったが、中でも外せないのはVAR判定で世界を騒がせたスペイン戦のゴール。ライン際1mmを諦めず追いすがった三笘薫(25)とその執念をゴールに繋いだ田中碧(24)は、歴史に残る勝利の立役者といって過言ではない。

 勝利のホイッスルが鳴ったあとに抱き合った2人が「よく居たお前!」「来ると思ってた!」と歓喜する姿は、見る者の胸を熱くしたものだ。同じ『さぎぬまSC』(神奈川県川崎市)に所属していたことから『鷺沼兄弟』と呼ばれている2人は、小学校の頃から切磋琢磨しあう仲だった。

「碧が活躍しているからこそ負けたくない」

 以前、田中が今年7月に『ABEMA』のインタビューに答えたセリフはそれを象徴している。

《彼(三笘)が常に僕の前を走っているんで、それに追い付こうと僕はしているだけ》

《常に上を目指すきっかけをもらってるんで、そこに追い付こうとただただガムシャラにやってる》

《(本人は)知らないと思いますけど》

 田中は三笘の1つ歳下で、学生時代は先輩・後輩の間柄だった。三笘は大学進学を選択したためプロデビューこそ田中の方が早かったものの、憧れの先輩の背中はプロデビューしてもなお、遠くに輝いて見えたのかもしれない。

 三笘のほうも、田中を大いに意識していたようだ。川崎フロンターレに所属後、先にプロとして活躍している田中にアドバイスを求めていたという。同じくABEMAのインタビューでは、田中への想いをこう語っている。

《碧が活躍しているからこそ負けたくないっていう気持ちも大学時代思ってましたし、そうやって近い存在が上に登っていくっていうのは、刺激になって後押ししてくれたと思っています》

 三笘がトップチームの誘いを断って大学進学を選んだ際は、「すぐに活躍できるイメージが湧かなかった」という気持ちが強かったそうだ。そんな時に身近な存在だった田中がプロとして活躍している姿が三笘の背中を押したという、実にドラマティックなエピソードだ。

 海外リーグへ挑戦を始めた時期もほぼ同じだった。田中はドイツのフォルトゥナ・デュッセルドルフ、かたや三笘はイギリスのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCと違う道を歩き始めた2人。しかし三笘はプロとしての先輩である田中へ積極的に連絡を取り、わからないことを聞いているそう。年齢を超えて、対等な相棒としての関係を築いているようだ。

 関係性を振り返るだけでも熱い2人だが、その爽やかな友情が注目されるのはスペイン戦のゴールで見せた以心伝心ぶりが印象深いからだろう。たとえば過去、川崎フロンターレがYouTubeに投稿した『【公式】Jリーグ中断緊急企画!「#教えてアオくん」』という動画では、ファンから寄せられた『三笘選手とプレー中に通じ合ってるな、と思う時はありますか』という質問に田中がこう答えている。

《まあ基本わかりますからね、やりたいこととか》

《ずっとやってるし。ここでココ来たらパス来るとか、このときに球欲しいんだろうなとか》

《一番やりやすいんじゃないですかね》

 まさしく「来ると思ってた!」という名言を裏付ける発言だ。あのゴールも、三笘ならどうしてほしいかを田中が見抜いて決めた『なるべくしてなった』結果だったということだろう。