目次
Page 1
ー テレビ番組の大食いチャレンジが論争に
Page 2
ー 日本と海外の大食いコンテンツの違い
Page 3
ー 日本ではスポーツ化の難しさもある

 

 大食い番組の人気は根強い。テレビ東京系では『デカ盛りハンター』が日曜のゴールデンタイムで放送され、5月には同局で『最強大食い王決定戦』が3年ぶりに放送されてSNSで話題になった。

テレビ番組の大食いチャレンジが論争に

 これらの番組を受けて、『高校生新聞オンライン』に“テレビ番組の大食いチャレンジ企画に違和感「食材の無駄では?」”と題された記事が公開。高校生記者は、「食べることが大好きな私はよく見ていましたが」と前置きした上で、「苦しそうに食べていること」、「食材を無駄にしているみたい」、「SDGsに逆行してないか」と3つの疑問を呈し、大食い番組の見方が変わったことを打ち明けている。

さまざまな反響を呼んだ『高校生新聞オンライン』の記事
さまざまな反響を呼んだ『高校生新聞オンライン』の記事

 この記事がヤフーニュースに配信され、約2000件に及ぶコメントが投稿されるなど、「大食い企画は是か非か」といった論争に発展。テレビのコンプライアンスが厳しくなる中で、大食い番組に対する風当たりも厳しくなっていることが浮き彫りになった。

 こうした世の中の変化を、当事者はどう考えているのか?

『大食い王決定戦』で3度の優勝を誇る、大食い界のエース、「MAX鈴木」こと鈴木隆将さんに、そのことをただすと、「高校生の主張を真っ向から否定することはできないです」と、神妙な顔つきで答える。

「大食いを議論するときに、昨今挙げられる問題は、“摂食障害を助長するのではないか?”と“SDGsにそぐわないのではないか?”という点です。記事を書いた高校生が指摘していることは、ここ最近、僕たちも痛感していることでもあります。

 僕の場合でいえば、必ず2か月に一度は健康診断に行き、数値に異常が見られたら大食いはしないようにするなど、健康面に関しては万全の対策を講じています。ですが、大食い番組や企画に挑戦するすべての人が、そうした健康面の管理をしているかと問われるとわからない」

 摂食障害の危険性に加え、さかのぼること'02年には、当時人気番組だった『フードバトルクラブ』(TBS系)の影響を受けた中学2年生が、友達と早食い競争をした結果、のどにパンを詰まらせて亡くなってしまうという悲劇を生んだ。この事故を受け、大食い番組は長らく放送を自粛。安全対策を徹底する──と宣言し、大食い番組が復活したのは3年後のことだった。大食い(あるいは早食い)への逆風は、以前から存在していた。

「批判は常にあります。僕のYouTubeチャンネルのコメント欄やSNSのダイレクトメッセージに、『子どもに教育しなければいけない親という立場なのに、恥ずかしくないんですか?』といった厳しい声が届くのは日常茶飯事です」(MAXさん)

 そのため、MAXさんは大食いの影響で病気になる、お店の人に迷惑がかかるといったマイナス面をつくらないように徹底しているという。その一方で、「“苦しそうに食べている”という指摘はそのとおりで、実際に苦しいときは多々あります」と苦笑する。