目次
Page 1
ー SNSが騒然となった「瞬間」
Page 2
ー 新事実が明らかになるのではないか、という期待
Page 3
ー 2面性持つ役柄で評価されてきた堺雅人
Page 4
ー 今「テレビドラマの王道」に挑む意味

 堺雅人主演の日曜劇場『VIVANT』(TBS系 日曜夜9時〜)が考察ドラマとして盛り上がっている。堺演じる主人公・乃木憂助は、第1話の時点で、誤送金問題に巻き込まれた平凡な商社マンという属性だけではない、秘密をプンプン匂わせてはいたのだが(何しろ第1話からもうひとりの人格のようなものが登場していた)、第4話、第5話と、実は、実は、と次々ベールがはがされていく。

 エンタメとしては極めてノリがよく、世帯視聴率もじわじわ上がっている。だが、気になる点も少々……。『VIVANT』の長所と短所を分析し、そのどちらが上回るか、考えてみる。

SNSが騒然となった「瞬間」

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 乃木は、商社マンとは仮の姿、VIVANT(別班)という自衛隊の陰の諜報部隊の一員で、日本を狙う謎のテロ組織テントを追っていた。ドラマの発端である誤送金も、そのテントが仕掛けたもので、会社の同僚でいかにもいい人のように見えた山本(迫田孝也)がテントの協力者・モニターであったことをつきとめた乃木は、自白剤を使って彼の行いを聞き出した末、殺してしまった(第4話)。それまで、どこか抜けているお人好しのようだった乃木が突然、残忍な悪魔のような顔に豹変したとき、SNS は騒然となった。

 続く第5話でも、乃木はさらなる情報を得るために、テントの実態に詳しい幹部アリ(山中崇)の家族(しかも子供)をむごいやり方で殺そうとする。子供を殺すことはアリの固い口を割らせるためのフェイクではあったが、日曜の夜、家族団らんで見られるはずの日曜劇場でここまでやる? とSNSでは賛否両論。が、世帯視聴率は、第1話の11.5%から第5話では14.2%とじわじわ上がっている(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。

 考察流行りとはいえ、この状況はいささか不思議なところがある。というのは、近年、ドラマで、激しい描写があると見たくなくなるという反応が顕著で、できるだけ穏やかな描写を心がける風潮があるからだ。