第92回 あのちゃん
一人称はボク、舌足らずな口調。バラエティ番組に進出したあのちゃんが話題になることが増えてきました。
ああ見えて大人、毒舌に込められた“気配り”
毒を吐いたり、一方でX(旧ツイッター)では、闇もしくは病みを匂わせることから、ファンとそうでない人との間で評価が分かれそうなタレントと言えるでしょう。彼女についてのネットニュースでは「あのちゃんはヤバい」というコメントもちらほら見かけます。年齢も出身地も非公表のあのちゃんですが、彼女を見ていると、この人は芸歴が長いのではないかと感じるのでした。実際、あのちゃんは2013年~2019年まで、ゆるめるモ!というアイドルグループで活動していたそうで、単純計算で今年芸能生活10年目ということになります。なぜこんなことを思ったかというと、あのちゃんはああ見えてオトナというか、毒舌に業界関係者への“気配り”を感じたからなのです。
かつてエンタメの世界の主流は、憧れをあおることでした。エルメスやシャネルなどのブランドものをたくさん持っている人、タワーマンションの高層階に住む人が“勝ち組”とされ、そう呼ばれたいがためにひたすら努力する人も多かったことでしょう。しかし、格差が進むと、成り上がることが難しくなりますし、また、運よくそちらの方にいけたとしても、上には上がいますから、埋めきれない格差に打ちのめされてしまうかもしれません。成り上がった人もそうでない人も、なんとなーくイライラしている世の中では、人は自分をイライラさせるモノや人に惹きつけられたり、恵まれし人の転落を待ちわびるようになるのではないでしょうか。女性同士のマウンティング(イライラすることがわかっているのに読んでしまう)や、タワマンはいいと言われたけれど、実は災害に弱くこんなに不便だという記事がPVを取ることは、その表れなのだと思います。
となると、芸能人も視聴者をイライラさせることが求められますが、この塩梅が結構難しい。
芸能人は人気商売なので、人をイライラさせつつも「でも、言っていることは理解できる、面白い」と思ってもらわなくてはいけない。「ただの口の悪い人」で終わるか、「口は悪いけど、悪い子じゃないよね」と思われる範囲で踏みとどまれるかが、個人のセンスなのだと思います。ご本人は無意識なのかもしれませんが、あのちゃんは、この辺の調節がヤバいくらいにうまいと思うのです。その理由を書きだしてみます。