能登半島地震の発生から3週間が経過した。石川県では最大震度7の揺れが襲った志賀町をはじめ、七尾市、珠洲市などで断水が続く。停電や燃料不足も解消されていない。道路の寸断で今なお孤立した集落もあり、被害の全容が見通せない状況だ。
元日に起こった能登半島地震
「災害のリスク評価を行う米ムーディーズRMSの試算によれば、今回の地震被害による経済損失は最大60億ドル、約8700億円に上ります。避難生活が長期化するなか、被災地以外の避難所に移る2次避難も進められています」(全国紙記者)
国の調査では、石川県で2020年から30年の間に震度6弱以上の揺れが起きる確率は「0.1%から3%未満」となっていた。それにもかかわらず、なぜここまで大きな地震が起きたのだろうか。
地球物理学者で武蔵野学院大学の島村英紀特任教授は、こう話す。
「原因は、まだはっきりとはわかっていません。ただ、能登半島では'20年12月から群発地震が続いていました。今年の元日の地震も一連の群発地震の1つで、特別に大きな揺れとなった可能性があります」
マグマやガスを含んだ水が地下深くに入り込み、活断層を刺激して、地震を誘発したのではという専門家の見立てもある。しかし、
「水は何万年も前から地下に流れ込んでいて、昨日今日始まった現象ではない」
と、島村教授は懐疑的だ。
「マグマの上昇に伴い地震が引き起こされたケースも考えられます。能登地方は周辺に火山がないので不思議に思うかもしれません。しかし、火山帯がないところでマグマの上昇が見られたケースは、世界中で確認されています」(島村教授)
一方、地形的な問題に目を向けるのは、立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授。災害リスクマネージメントを専門とする立場から次のように指摘する。
「能登半島は有名な“地すべり地帯”。土壌がもろく、斜面がすべり落ちて崩壊しやすい場所なんです。しかも震源の浅いところで地震が発生したので大きな揺れとなり、地すべりを起こした。その結果、道路が波打つように隆起して、ずたずたに寸断されました。
加えて日本海側では、干潮時と満潮時で潮の満ち引きの差が少ない。そのため海岸線ギリギリの場所に建てられた家が珍しくありません。当然、津波被害のリスクは高まります」
群発地震の影響も見過ごせない。
「3年あまり続いていた群発地震によって、建物がダメージを受けていたおそれがあります。さらに地震の前から人口が少ない過疎地で、耐震性の低い、古い建物が多い地域。強風対策で屋根に重い瓦を乗せている家屋も多くありました。そうした複数のリスクが重なり、被害拡大につながったのでしょう」(高橋教授)